濃厚接触者の待機期間

濃厚接触者の待機期間がオミクロン株の特徴に合わせて日々短縮されています。過去の感染者のデータに基づいて社会・経済維持とのバランスを取っているので良い方向に向かっていると思います。

ただ、感染者に対しては重篤化する可能性がある場合は入院措置を取るなどのある種の強制隔離ができるわけですが、濃厚接触者の自宅待機はあくまでお願いでしかないことをもっとTV等で説明すべきでしょう。いろいろ調べてみましたが、厚労省からの事務連絡として濃厚接触者の待機期間が改訂されているようで、その法的根拠はないようです。

ここで誤解があってはいけないので、濃厚接触者の調査をする積極的疫学調査感染症法で規定されていて、濃厚接触者をリストアップするための調査には強制力があります(実際は、人権の問題もありますし、行政手続きが面倒すぎて書面による命令が発動されることはないと思いますが)。ただし、必ず濃厚接触者を探すことが義務付けられているのではく、まん延を防止するために都道府県が必要と思えば調査することができる、となっています。「することができる」だけでしなくてもいい。ですから、このところのように感染者が自分で濃厚接触者に連絡するというような簡易化もできるわけですし、現在のように経路不明の市中感染が大部分で、濃厚接触者を特定している2~3日の間に既に感染した人が発病したり、他の人に感染させているという状態で積極的疫学調査や濃厚接触者の特定には意味がないのでやめてしまっていいと思っています。

このように濃厚接触者の認定は地方自治体でしてもしなくても良いですし、一部の重点に絞って実施してもいいわけです。ここからが問題で、認定された濃厚接触者は保健所から健康観察を受けるわけですが、本人が感染していない限りにおいては外出の制限については何の強制力もありません。ただのお願いになります。ですから、買い物も行けますし、場合によっては勤務することもできます。社会的通念上は、感染したかなと思ったら、人に接しないのがマナーではありますが、通常の生活をしたからといって違法とか条例違反ということではないようです。共通テストの受験生が濃厚接触者であっても会場の別室等で受験できたのはこのためです。結局、濃厚接触者の待機期間や待機解除条件は指針として出されているだけで絶対に守らないといけないという類のものではないということです。もちろん守った方がいいのですが。

勤務することができると書きましたが、実際は会社側で就業を制限している場合が多いので、国や自治体の制限ではなく、会社の就業規則により濃厚接触者は勤務できないことが多いと思います。学校も同様で学校保健安全法で感染症にかかっている疑いのある生徒(=濃厚接触者)は出席停止にできることになっています。

最後に、TVで濃厚接触者の特定をやめてはどうかと専門家が提案すると、キャスターが感染拡大している中で大胆な提言ですね、というような反応する。感染拡大の防止策を緩めているように見えるようです。しかし、感染爆発の状況において実際に濃厚接触者の特定により感染が減るのかどうかもわかりません。なぜなら、市中感染が起きているので、濃厚接触者を抑えても他でどんどん感染者が出てしまいますし、濃厚接触者を特定する間に濃厚接触者が発病したり他に感染させたりしているのですから、ザルで水を止めようとしているようなもので効果があるとは思えません。濃厚接触者の特定は「封じ込め策」としては有効ですが、封じ込めに失敗している状況では意味はないので、貴重な保健所の労力は重症者の発見や重症化の恐れがある人への早期投薬といった有用な場面に投入すべきなのです。

また、濃厚接触者の特定は感染初期の拡大を防止するためのもので、医療としてやっているわけではありません。感染したかもしれない人を観察して、発病したらすぐに入院させるというような、親切で丁寧な医療の一部と思っている人も多いかもしれませんが、基本的に疫学調査の一環としてやっているだけで、医療目的ではありません。

もうひとつ別の面から濃厚接触者の特定をやめないといけない理由があります。今毎日8万人ぐらいの感染者が出ていますが、オミクロンは無症状の人も多いので、実際には5倍ぐらいの感染者がいそうです。そうすると40万人ぐらいが毎日感染していると見積もれます。この濃厚接触者が各10人いるとすると毎日400万人の濃厚接触者がいることになります。実際は重複があるので多めになっていますが、マスクの効果が低下していることを考えると保健所の甘い特定条件ではなく、実質的に考えると真の濃厚接触者はこれぐらいいてもおかしくありません。ということは10日間の自主隔離を考えると10日間で4000万人が自宅待機になる計算になります。もうこれ、濃厚接触者特定により、社会活動が全面停止になるぐらいの自宅待機レベルです。電気や水道、流通などすべて止まってもおかしくありません。濃厚絵接触者の濃厚接触者を隔離する職場もあるようで、もう大変です。前も書いたように、マンツーマンディフェンスによる追跡はやめて、医療・介護関係者は定期検査するというゾーンディフェンスに切り替えて、一般人は調子がわるくなったら出勤や登校をせず病院に行く、で十分のように思います。