円安

日本の外に住んでいるひとの中に、現在の円安がメリットの人とデメリットの人がいる。メリットになっているひとは海外の通貨で給料をもらっている人。現地採用の人。デメリットになっているのは日本で雇用されていて給料が円ベースのひと。この辺の話題を振ってみると、円安をどうとらえているかによってどちらのタイプの人かわかる。

円安の先行きはどちらの人にとっても気になる。エコノミストによると、現在の状況が続けば1ドル160円、そのうち200円もありうるということだ。このところ、1ドル151.8円という謎のレートで円安傾向が止まっている。日米の金利差があるので、円からドルへの流れは止められるとは考えらない。米ドルの定期預金の金利が年4~5%のときに、年0.02%の円定期預金に預ける人はいない。もちろん為替レートの変動があるので、年で5%円高になると金利分は消えてしまうのだが、ドルから円に換えずに保持しておいて、いつかまたドル高になったときに交換すればいいだけなので余裕資金である限り特には問題ない。

円買いによる為替介入を期待する声もあるが、大きな金利の高低差があるかぎり介入してもすぐに元のレベルに戻るだろう。G7も原則為替介入は禁止としている。もし将来第2期のトランプ政権が誕生した場合、日本が今為替介入を行ってしまうと為替操作国に認定されてしまう危険もある。

そもそも今は円安ではないとも考えられる。現状の日米の物価格差が生まれた理由は欧米のインフレだ。2021年に日本で1個100円(=当時1ドル)でリンゴが1個買えたとして、アメリカで物価が急上昇してアメリカ国内でリンゴ1個が2ドルになったとする。しかし日本で生産されるリンゴは100円のままなので、本来は1ドル50円の為替レートにならないと物の値段が釣り合わない。しかし、インフレに合わせて為替レートはすぐには動いてはくれない。日本では1個100円でリンゴが生産できることは変わらないのだから。実際は燃料代や肥料代など輸入品の値段が高くなるため日本の物価が上がって、そのうちリンゴが1個200円になったとすると1ドル=100円に調整される。現状1ドル150円なのでこのケースではもっとインフレになることを意味している。結局、今は円安なのではなく、日本がインフレになって物の価値が調整されようとしている過程にあると考えるべき。他国のインフレによって起きた物価の歪を為替レートだけで調整できると思うのは楽観的すぎる。

結局、円安を止めるには誰でもわかるように日米の金利差を徐々に縮小して円貯金の流出を止めることが大前提で、これにプラスして日本の物価を欧米並みに上昇させるしかないように思う。その場合、最低賃金が時給2000円以上になることもありうる。また今の日本の株高は将来のインフレを織り込んでいると捉えれば、今の株価が高すぎるわけではないと気付く。エコノミストが指摘しているように企業業績も株価と釣り合っているのでバブルとはみなせない(もちろん地政学的な問題や災害、どこかの国の経済急落など予期しないイベントで株価が急落する可能性は常にあります)。

 

 

Covid-19振り返り

2019年末頃から拡大した新型コロナ感染症スペイン風邪以来の100年に一度の世界的災害だった。この機会に新型コロナ危機について振り返っておきたい。日本では2023年5月に新型コロナは感染症法上の5類となり公式に収束(終息ではない)した。8月現在では、国内・海外旅行もコロナ前に戻り、会社の勤務体系や学校の活動も従前にもどっている。その後、感染は続いているので新型コロナ感染症が消滅したわけではないが、一時の人類が滅亡するのではないかとまで危惧された状況からは脱して、新型コロナはインフルエンザ程度の感染症として扱われるようになった。振り返ってみて、その主な要因は、①ワクチン接種や感染により新型コロナに対する抵抗力を持った人が国民の大部分になったこと、②新型コロナ自体が初期の株から変異し弱毒化したことの2つだろう。特筆すべきことは、mRNAワクチンという画期的なワクチンが早期に生産され、全国民が1年程度の間にワクチンを受けられたこと。

従来のワクチンはウィルスを無害化したものを接種していたため、該当ウィルスを卵の中などで増殖させる必要があった。しかしこれでは短期間に全人類をカバーするような生産量を確保するのは不可能に近い。一方、mRNAワクチンは、ウィルスの一部の重要断片だけを体内細胞で生成するためのmRNA設計図を接種するというワクチンであり、設計図を書き換えれば変異ウィルスにも簡単に追従できる。幅広いワクチン接種がなければ、強毒のままの新型コロナウィルスに国民の大部分が1度は感染するまで感染は続いていたと思われるので、もっと犠牲者は増え、社会生活は停滞し、旅行業や飲食業を含め社会全体にもっと大きなダメージを与えただろう。あまり顧みられていないが、コロナ禍の期間に中学生、高校生、大学生が部活や修学旅行など制限され、自宅からオンラインでの授業を受け続けるなど、本来人生の中でも最も輝ける時期の何年かを失ってしまったことも社会的に大きな損失だ。

少し脱線するが、今回の新型コロナ禍を振り返って感じるのは、マスコミと感染症の相性の悪さだ。マスコミが悪いということではないのだが、マスコミというのは、特殊な例外事象を探しあててそこにスポットライトを当てることを性としている。犬が人間を噛んでも大きなニュースにならないが、人間が犬を噛むをニュースになる、というやつだ。感染症は、確率的な現象なので、同じウィルスでも感染して亡くなるかたもいるし、全く軽傷で終わる人もいる。マスコミは、確率的な側面を考慮せず、特殊なセンセーショナルのケースだけを報道する。例えば、ワクチンであるのでいくら安全性を検証してから開発しても、非常に稀にワクチンによるアナフィラキシーショックなど重篤な症状を起こす方はいる。そのようなケースが起きれば、そのことを報道するのがマスコミの役割ではあるが、確率的な現象であるので、効果とリスクの確率的バランスを考えた「期待値」についても報道しなければならないのに、どうしても例外的な特殊なことだけをとりあげ、それが多発しているかのような取り上げ方をしてしまう。

未だに、感染数の増加をだけを取り上げて警鐘を鳴らしている報道も見かける。感染者数が増えていても、実際に病床はひっ迫していないし病院も混雑してない、重症者数・死者数も増えていないといった都合が悪い点には触れない。病院のひっ迫に関しても、数ある病院の中で、一番病床がひっ迫している1次対応病院を選んで取材し、危機的な状況を訴える報道をする。でも実際は他の病院はまだ病床が空いている。NHKのサイトで病床のひっ迫状況を定期的にチェックしている国民にはウソだとわかるが、報道だけみると確かに病床がひっ迫していると信じてしまう。その病院は確かに大変な状況にあるので、そこの医者に現状について話してもらえば、全員が「病床は危機的状況で、国民は感染防止に気をつけて、国も感染防止策が必要だ」という旨のことを話す。自民党の本部に行って、自民党の支持率をカウントしているのとあまり変わらない。確率的思考ができていない。この場合は、特定の特殊な病院を探すのではなく、全病院を調査して病床のひっ迫状況の推移から今後を推移を推定するような報道が必要だった。

また、マスコミは文系出身者が主体のため、科学的・医学的知識が不足した状態で理解したことを報道しがちだ。たとえば、一番ひどかったのは、「ワクチンは病状を抑える効果はあるが、感染を防ぐ効果はない」というデマをちょくちょく報道している番組があった。ワクチンに関する当時の最新の論文を読めばわかることだが、早い段階でワクチンには感染予防効果もあることが専門分野の査読付き学術論文として発表されていた。査読付きであるので、その分野の権威ある審査を通っているため、その内容が理解できない素人が統計の取り方がオカシイから信じられないと言っても意味がない。確かに、ワクチンが出た当初は、ワクチン接種者の数が少なく感染予防効果が判定できず、発症予防効果しか確定できていなかったが、その後接種の広がりとともに、感染予防効果も証明されていた。そのあたりは、ちゃんと最新の情報を勉強している専門家の裏付けをとるのがジャーナリズムのはずなのだが。

 

だいぶん脱線したので話を元に戻す。時系列的に振り返ってみると、今回のコロナ禍は以下のように進行した。

  • 2019年11月頃 中国武漢で致死率の高い呼吸器系感染症が広がる。
  • 2020年1月 武漢でロックダウン。医療施設の建設。WHOがコロナウィルスと認識。

この頃、まだ日本では新型コロナウィルスが世界的な危機的になるとはあまり思われていなかった。以前のSERSのように封じ込めも可能ではと思われていた。

  • 2020年2月 新型コロナウィルスを感染症法上の2類相当(と言っているが実際は1類準用)に指定。2/3に横浜でダイヤモンドプリンセス号の検疫。2月ぐらいから、国内でも屋形船などのクラスターの発生が確認される。コロナ感染による死者も発生。深刻なマスク不足。市中での感染者がみつかり始める。この頃の新型コロナウィルス(武漢株)は肺に重篤な感染を起こし致死率が10%前後。
  • 2020年2月27日 安倍首相が全国の学校に一斉休校を要請。春休みを前倒しして、3/2から学校が臨時休校。
  • 2020年3月 3/5の新型コロナウイルス感染症対策本部による「水際対策の抜本的強化に向けた新たな措置」に基づき、日本入国時の検疫が開始となり、指定国からの入国者(日本人を含む)は14日間の隔離が要請される。一部の国のビザ免除が停止。3/21以降は、シェンゲン加盟国からの入国者のビザ停止と隔離。3/26以降はアメリカからの入国者も隔離。入国後14日間は公共交通機関の利用自粛を要請。
  • 2020年3月 世界各地の都市でロックダウンが実施される。
  • 2020年3月 各種学会がオンラインに。ここでZoomのスケーラビリティと安定性が実地で検証され、その後の学校のオンライン授業やオンライン勤務への移行に貢献した。オンライン飲み会も行われる。3/29志村けんさんコロナ感染により逝去。選抜高校野球などスポーツの大会中止。東京オリンピック2020の延期も決定。
  • 2020年4月 新学期ではあるが、学校の授業開始は5月以降に延期。授業をオンラインや自宅学習による授業に切り替えるための準備を急遽行われる。4/7 新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言(4/7-5/6)。緊急事態宣言を受けた具体的施策は都道府県知事の権限。インフラ業種以外には休業要請。自治体による休業協力金の検討開始。リモートワークが開始。コンサートや演劇などの文化活動のプロ活動に支障。
  • 2020年3月・4月は、日本国中(および世界全体)で人の活動が止まり、とても不安な時期だった。イタリアやアメリカなど海外での感染爆発のニュースも不安を掻き立てた。ただ、日本では海外ほどの感染爆発は起きていない。ひとつには、日本がもともとあまり人と接近して接触する文化ではないことと、家では靴を脱ぐ・毎日風呂に入るなど清潔を好むことと*1、花粉症でマスクをしている人が多く飛沫感染を防げたことなどが考えられる。この頃の武漢株は、感染すると重篤な肺炎を引き起こすが、感染力はそれほど強くなかった。そのため、日本的な特性が感染防止に効果があった。その後、オミクロンのような感染力の極端に強い変異種になると、電車やバスの中でマスクをしていても感染するため、日本が最終的には世界最大の感染者数を記録した。
  • 2020年5月 緊急事態宣言を5月末まで延長。5/20夏の甲子園高校野球大会中止決定。大学の授業はリモートで実施。小中高は在宅学習中心。
  • 2020年6月 感染状況が落ち着いてきたことから学校再開。分散登校や短縮授業。給食時は黙食。部活の自粛や対外試合・大会が中止に。大人が飲食店で会食をしているのに、学生は部活ができないというのは納得できないという在校生の声。
  • 2020年8月 夏休みの早期終了。一部の学校ではお盆明けから授業開始。
  • 2020年9月 多くの学校で文化祭中止(またはオンライン開催)、修学旅行の中止や行先変更(県内など)、オンライン学習に。運動会も中止に。アルファ株が英国で検出される。お祭りなどの地域行事の中止。
  • 2020年10月 デルタ株がインドで検出される。デルタ株は、武漢株より感染力(基本再生産数)が2倍ぐらい高く、入院リスクも高い。
  • 2021年2月 医療従事者などにデルタ株を対象にしたワクチン接種開始。-20度での保管が必要なため、国民全体への接種のためにはロジスティクスの構築が必要。
  • 2021年4月 多くの大学も通常の授業に戻る。
  • 2021年5月 一部都府県に緊急事態宣言。菅首相がワクチン1日100万本実施を宣言。
  • 2021年6月 高齢者から順に一般国民へのワクチン接種拡大
  • 2021年7月 東京オリンピック2020開催。バブル方式による一般との隔離。
  • 2021年8月 デルタ株の感染者数がピークに。抗体カクテル療法が承認され治療への道が開かれる。ワクチンの2回目接種も進み、高齢者の90%、一般の50%程度が8月末までに2回目接種し、多くの国民がコロナに対する免疫を獲得。
  • 2021年8月 イギリスはワクチン接種者に対して入国時の隔離措置を免除。ヨーロッパ内で国を跨ぐ人の移動も活発に。

この頃は、ワクチン接種も進み、治療薬も承認され始めたことから、新型コロナウィルスの克服の兆しが見えてきた。西欧諸国では、コロナ対応を大幅に緩和し始める。イギリスでは、ワクチン接種者に限って野外フェスへの参加も認められる。海外への渡航もビザを取得すれば可能になってきている。ただし、帰国後14日間の隔離が必要なためビジネスや観光旅行は一般にはできない。海外赴任や留学などは限定的に再開される。

  • 2021年9月 ミュー株について盛んに報道されるがその後感染拡大はない。デルタ株の感染力(基本再生産数8程度)であれば、ワクチンで抑え込める見込み。感染者数減少。
  • 2021年10,11月 ワクチンの効果で、この時点ではコロナ禍はほぼ収束と思われた。が、その後オミクロン株が拡大。
  • 2022年1月 オミクロン株の感染拡大。オミクロン株はデルタ株からの変異が大きく、デルタ株ワクチンにより獲得した免疫があまり効かない。ただし、感染拡大の震源地である南アフリカの臨床の現場からは弱毒化したという報告があるも日本では不安視する報道ばかりがNHKを含め多数。深層報道バンキシャという番組はいち早く桝太一が現地南アフリカの医師にオンラインでインタビューし、真の現状を伝えていた。後から考えると、オミクロン株は一部でささやかれていたように天然のワクチンとなった。感染することで新型コロナ全体に対する免疫を得ることができる。
  • 2022年3月 オミクロンBA.2の感染者数がピークに。海外からの日本へのビザに基づく入国を再開。ただし、ビザ取得のためには日本内に責任を持って受け入れる企業や大学が必要。旅行目的も観光は不可。
  • 2022年4月 アメリカでは、コロナ対策はほぼ終了しマスクの着用義務緩和。
  • 2022年6月 オミクロンBA.5の感染者数がピークに。アメリカ入国時はワクチン接種証明により隔離措置なし。一方、日本帰国時のPCR検査等による厳密な陰性証明は継続、海外出張の大きな足かせになる。

この時点で、日本でも新型コロナを政治決断により5類に移行させても何も問題なかったと思われるが、国民の漠然とした不安感がまだあり慎重論に支配されていた。水際対策も継続されていたが、国内で感染が拡大しているときに水際対策をする意義はほとんどない。航空機内は空気の換気が早く、あまり機内での感染は起きていない。

  • 2022年10月 ワクチン接種者は日本入国72時間前のPCR検査不要に。
  • 2023年4月 マスクの着用は個人判断に。
  • 2023年5月 新型コロナを感染症法上の5類に変更。これに伴い、新型コロナに関する政府の対策本部も解散。事実上の新型コロナの収束宣言。

最後にコロナ禍を通して、新たに得られた知見は以下の通り。

  1. 日本は個人病院の病床が多く、感染症に対応できないところが多いことが明らかになった。今後の万が一に備えて、感染症のための病床確保を国の指示により行なえるように法改正が必要。例えば、個人病院であっても感染症を診断できるように陰圧機能や感染者とそれ以外の患者の動線の分離ができることを開院の条件にするなど。
  2. ディジタルトランスフォーメーションの重要性が認識された。リモートワークも認められていない会社が多かったが、正式な勤務制度として導入され、これまで紙と印鑑で行われていた事務処理がオンライン決裁に変わった。オンライン授業やオンラインミーティングのメリットも社内や学校内で共有された。
  3. 日本はすべて自粛要請ベースで進めたが、本当に重篤感染症の場合は、逮捕を含む強力なロックダウンが法律上できないのは国を守るという観点からは危険。ロックダウンはしないに越したことはないが、万一に備えてロックダウンの法整備が必要。
  4. 従来から欧米の医療関係者は、マスクには感染予防効果はないという共通認識があった。コロナ禍を経て、マスクには感染力の低い株では効果があることがわかり、欧米でもマスク着用が義務化されたが、その後、オミクロンのような感染力が強い変異種では実質的な効果はなく、日本でも大規模な感染拡大が起こった。マスクは、飛沫などの拡散や吸収を何%か防いでくれるが、非常に感染力の高いウィルスの場合は、マスクと顔の隙間やマスクの目を通して、十分感染する量のウィルスを体内に取り入れてしまうため、トータルとしては効果がない。例でいうと、HPが100の人が1000の攻撃を受け場合、10%ぐらい緩和しても残り900の攻撃を受けるとHPがゼロになるようなもの。焼け石に水
  5. ワクチンはマクロな感染拡大防止には絶大な効果がある。
  6. 逆に、ワクチンのない未知のウィルスが出た場合は、感染後に回復して免疫を得て生き残るしか方法はない。
  7. 自粛ベースの人流制限の感染防止効果は証明されていない。
  8. 水際対策は、船や貨物飛行機を含むすべての人流を止めて鎖国しない限り効果がない。エネルギーや食糧を海外に依存し、自動車などの輸出で国が成り立っていることを考えると、海外との完全な人流の遮断は不可能なので水際対策の効果は薄い。今回のコロナの場合、市中感染が広がってしまえば厳格な水際対策は不要。市中感染前であっても入国後の隔離措置は1週間の自宅待機程度で十分。市中感染拡大後の水際対策は不要。
  9. 学校教育を早くタブレット化して、大量の教科書・副教材を毎日学校に持っていくのをやめて、タブレット教科書で統一すること。こうしておけば、今後万一リモート授業になっても対応できる。
  10. オンライン授業の可能性が見いだされた。平常時でも、スタディサプリのような映像授業で良いように思う。なぜ、このIT時代に全国の公立学校で何千人もの教員が同じ教育課程の内容をばらばらに授業しないといけないのか。全国で授業のうまい教員が何人か各教科をオンラインで授業して、教室で教員が生徒をサポートすれば、教員は生徒のケアにもっと時間を使える。各クラスで、必要に応じて補習を行ってもいい。

※あまりに長い期間のまとめですので、書き忘れていたいことがあれば適宜追記していきますのでご了承ください。

 

*1:フランス人は毎日はシャワーを浴びない人も多いし、イギリス人の半分ぐらいはトイレの後に手を洗わない

5月から5類移行

5月8日から新型コロナウィルス感染症は5類に移行することになっている。実際にどのような法的手続きで進むのか気になった。

まず、おさらいとして、新型コロナは、現在感染症法上の新型インフルエンザ等感染症として規定されている(第6条7)。TVで2類相当と表現されているが、新型コロナの初期は確かにそうだったが、2021年の感染症法改正で新型インフルエンザ等感染症となっている。ただし、少々複雑なのは入院を必要とする人にとっては2類相当の措置ができるように規定を残してあるので、まったく2類相当でないとも言い切れない側面はある。ただ、現時点で、実際には99%の国民にとっては新型コロナは2類相当ではないので、2類相当と呼ぶのは不適切だろう。また、2類相当部分についても実際は感染症法の1類準用規定を用いているので1類相当と呼ぶべきだ。

さて、5/8以降に新型コロナを5類相当にするにあたって、感染症法の改正が必要になるはずだが、いくら調べても第6条7の改正の話を聞かない。どうも、新型コロナウィルスはもはや新型コロナウィルスではない、という頓智のような扱いをするようだ(間違っていたらすみません)。まるで「白馬は馬にあらず」という論法。

感染症法に定義されている新型コロナウィルスは

新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

と定義されているので、もはや今の新型コロナウィルスは、これに該当しないという宣言を厚労省がおこなうということのようだ。そのため、新型コロナウィルス感染症は、新型インフルエンザ等感染症として感染症法には残るが、今流行している新型コロナに対してこれまでのような特措法もからむような対応はできなくなる、ということらしい。あまり美しくない。ただでさえ今の感染症法は読み替え読み替えでパッチを当てまくっていて、わかりにくいことこの上なく、このままだといつか破綻するのではないかと心配になる。

ともあれ、これで新型インフルエンザ等対策特措法も現在の新型コロナに対しては行使できなくなる。行政的には、コロナの変種が発生したらすぐに元に戻せるようにしているのだろうけど、そこは一旦新型コロナを新型インフルから外して、ちゃんとした方が良いように思う。

さて、これで新型インフル扱いではなくすことができることは分かった。次に5類に入れるのはどうするのか。5類の定義に新型コロナを入れる法改正があると思っていたが、こちらも見当たらない。こちらも感染症法第6条6の九の「厚生労働省で定めるもの」として新型コロナを5類に指定するようだ(5類相当ではない)。このような軽い扱いにしているのは、近いうちに5類から外して只の風邪扱いにできるようにということと、逆に、元の新型インフル扱いに戻す場合も省令で簡単にできるという両睨みの対応だろう。官僚的には正解だけど、やはり1国民としては省庁の裁量でころころ変えるのではなく、必要性が生じたときにその都度国会で審議して法改正してもらいたいところだ。

Hinet

Hi-net自動処理震源マップで過去24時間に自動観測された地震の数を確認するのを日課にしている。

通常、過去24時間で300回ぐらいの地震があり、この数が250回ぐらいまで下がると日本のどこかで震度4ぐらいの地震があり、稀に震度5~6ぐらいが起きる。大きな地震があった後は350回以上に上昇し、しばらくそのレベルが続いて、ゆっくり300回ぐらいに下がってくる。

過去1ヶ月ぐらいこれまでとは違う傾向が続いている。過去24時間の地震回数が230ぐらいまで下がって、そのまま下がった状態が続いている。震度4程度の地震があると280~300ぐらいまで上昇するが、すぐに230ぐらいに下がっている。

だからどうだということは言えないのだけれどかなり不審な状況ではある。水や食料、カセットコンロ、懐中電灯・電池式ランタン、医薬品、トイレットペーパー、乾電池、携帯ラジオ、携帯TV、簡易トイレ、モバイルバッテリー、ポータブル電源(またはEV/HV車の100Vコンセント)ぐらいを確保しておくに越したことはない。最近の20万円ぐらいの大容量ポータブル電源の中には短時間ならエアコンや電子レンジを動かせる機種もある(AC出力1,500Wぐらいの機種)。ガス機器についても、停電時にポータブル電源から100Vを供給すれば、ガスさえ止まっていなければガス給湯器やガスレンジも使える。ガス給湯器の電源は外壁についている100Vコンセントから取っているので、そのコンセントをポータブル電源につなげば使える。高機能ガスレンジの100V電源もどこから供給されているか日ごろから確認しておくとよい。レンジの下の床あたりに空間があればそこにコンセントがあるかもしれない(簡易ソケットのときは感電に注意!)。当然のことではあるが、電池式のガスレンジであれば停電してもそのまま使える。

 

応召義務についての補足

ネット上で特に医療関係者が、応召義務について患者さんが誤解しなように注意喚起している記事をみかけます。前回、応召義務について少し書いたので、捕捉しておきます。

 

先に紹介した下記の解説記事に書かれていることとの整合性を簡単にまとめる。

コロナ診療での医師の応召義務-発熱患者の診療を一切拒否した場合、応召義務違反となるか? |ニッセイ基礎研究所

 

(ネット上の主張)「応召義務は、医師が患者に対して直接民事上負担する責任ではない」

(解説)その通り

私見)医師免許は国から医療行為に対する独占的な権限を与えられているものですので、当然、その国に対して義務を負っていると理解しています。つまりは、患者が診察拒否を理由に、応召義務違反で病院や医師を訴えることはできないことになります。ただし、記事によると、これが損害賠償訴訟に援用される場合があるということですので、正当な理由なく診察されなかったことによる損害が、応召義務違反を根拠に民事裁判により認められる可能性はあります。

(ネット上の主張)「応召義務に罰則はない」

(解説)その通り。ただし、医師法7条の医師としての品位を損するような行為には罰則があり、応召義務にたびたび違反することはこの対象となる。

私見)国が応召義務違反を認めた場合は、合わせ技でペナルティが課せられることがあるということで、これまではそういうケースはないようですが、これまで使われていないからといって、無いとは限りません。

(ネット上の主張)「これまで応召義務に従って2類だから治療してきた病院は、5類になった後に新型コロナを診察しなくても応召義務には違反しない」

(解説)昨年8月の記事なので解説には5類のケースは書かれていない

私見)新型コロナが5類に規定されるのは、初めてのことですので判例はなく、裁判が起きてみないと結果はわかりません。国が新型コロナを5類に分類するということは、新型コロナを季節性インフルエンザと同様に治療せよという意思表示ですので、インフルエンザの患者を診察している病院はコロナも診察しないと、応召義務違反になると考えるのが普通のような気がします。厚労省もこれまで、「2類相当であることを理由に診察しなくても応召義務違反にならない」と説明していますので、裏を返せば、5類になれば応召義務が生じると解釈するのが自然ではないかと思います。

 

実際には、ほとんどの病院でコロナの診療をしているのが現状ですので、5類になっても医療体制にあまり変化はないのだろうと思います。外来エリアに陰圧室は不要ですし、ゾーン分けもインフルエンザ程度で十分です。コロナへの感染が心配な個人病院は、看護師さんも含めてN95(またはそれに準ずるマスク)をすればよいのではと思います。以前紹介したように、普通の不織布マスクではコロナは十分には防げないという論文が出ています。デルタ株までの大変な時期に発熱外来を担当された病院には大きな負担をかけてきましたので、オミクロンになって症状が軽くなり致死率も下がった現在、これまで発熱外来をやってこなかった病院こそ他の病院の倍ぐらいコロナの治療に携わって、地域医療に貢献してもらえるとよいのかなと思います。

 

 

 

 

 

 

コロナ5類時の診療

1年ちょっと前に、南アフリカの医師の報告を紹介し、オミクロン株がそれまでのコロナと比べるとかなり軽い症状しか引き起こさないということをこのブログで報告して、その時点で5類扱いを提案していた。それがやっと現実のものとなった。今、新型コロナが5類相当になった場合、診療する医者が増えるか減るかということについて諸説あるようです。実際は、医師法第19条のいわゆる応召義務があるため、診療は正当な理由がなければ拒否できない。つまり、5類になった場合、眼科に肺炎の治療を頼むような無理なシチュエーションではなく、常識的な診療対象である限り拒否できないのです。患者は行きつけのどの病院でも診察を受けらるようになります(インフル同様事前の連絡をして、待合室以外で診察を待たされることはあるでしょう)。

応召義務については、下記に非常に詳しく正確にまとめられいます。

コロナ診療での医師の応召義務-発熱患者の診療を一切拒否した場合、応召義務違反となるか? |ニッセイ基礎研究所

興味深い点は、19条には罰則はないけど、19条に違反した時点で7条の品位を損なう行為としてペナルティがあるという点。

厚労省の指針として、これまではコロナが2類相当であることを理由に、コロナ指定病院を案内することにより診療を回避することは応召義務には反しないということになっていました。逆に言えば、新型コロナが季節性インフルエンザと同じ5類になった場合は、新型コロナであることを理由に診療を拒否することはできないということになります。

そうはいっても実際には新型コロナは既に5類相当の扱いになっています。濃厚接触者の判定も保健所は感染者に任せていますし、感染者も自主的に療養するだけで誰もモニターしていません。感染者や濃厚接触者であっても実際には普通に社会生活している場合もあると思います。あえて、検査をせずに暮らしている場合もあるでしょう。それでも実際に感染した人が自宅療養で回復する病気だといことを体感していますので、新型コロナに対する警戒心は国民全体でかなり下がっているのではないでしょうか。極端なことを言えば、封じ込めができないほど感染力の強いウィルスで、かつ症状がインフル程度の病気ですので、長いスパンの間には国民全員が1回は感染してしまう病気であるというということです。特に、今でも9割近い医者が既にコロナを診療しているということですので、5類扱いになっても医療の提供状態は基本は現状と変わらず、一時的な感染の増加はあっても大きな社会的混乱はないでしょう。

誤解している人がいるようですが、既に大多数の人については、新型コロナの感染者の外出を制限したり、入院を強制する法的根拠はなくなっています。特に入院の強制は人権侵害の可能性が高いため、非常に限られた場合にのみ認められます。たとえばエボラ感染が日本で発生したような場合。初期の新型コロナ~デルタ株ぐらいまでの危険性の高いウィルスだった時期までは、入院の強制や外出制限をかける法的根拠がありましたが、感染症法の改正により新型コロナが新型インフルエンザ等感染症(1~5類の対象外)という分類になったあたりから、ほとんどの感染者は2類相当(1類準用)扱いの対象から厚労省の省令により外れています。だから今は自宅療養でOKですし、保健所の介入もないのです。これまでも感染者以外に対する外出・会食自粛はすべて依頼であって、法的な強制力はありません。それが良いことかどうかはわかりません。今後、もっと凶悪なウィルスが発生したときに、今回と同じようつもりで対応すると大変なことになる可能性があります。そういう意味では、平時の間に罰金や拘束も可能とする法的に根拠のあるロックダウンは実現可能にしておくべきでしょう。

 

新型コロナが4月から5類に

2023年4月から新型コロナが季節性インフルエンザと同じ感染症法第5類扱いになると報道されている。これでやっと、欧米のような社会運営になる。基本的には、新型コロナ前の社会に戻り、新型コロナはインフルエンザと同じ扱いで社会に定着するということだ。しばらくは、コロナの医療費負担は特例的に続く。半年前にはこの方針転換をしておくべきだったと思うが、やらないよりは良いのは間違いない。

法改正の必要がないと言われているので、省令によってすべての新型コロナ患者について、感染症法の2類相当(実際は1類準用)の対象から外すということだろう。ただ、本当に5類に組み込むのであれば、新型コロナは感染症法の新型インフル等に規定されているので、法改正が必要なはず。法改正なしで、新型インフルエンザ等感染症からどのように新型コロナを抜くのか気にはなる。

実際、現状では新型コロナは高齢者や基礎疾患がある人以外は、個人が自宅で検査して、陽性であれば陽性者登録センターにネットから情報を登録して、自宅療養して終わり、という状態で、基本政府はなにもしていないのと同じ。重症化リスクがある人にとっても、現状の登録センターを経由した医療の提供スタイルよりも、地域の病院で直接ケアしてもらう方が綿密な治療が受けられる。

海外の状況を追いかけているので、この転換ができたのだろうが、もし、これが日本特有の状況で前例・参考例がない場合だとすると背筋が寒くなる。欧米のデータに基づく迅速で的確な政策決定に比べて、日本は政治判断が遅く、事なかれ主義になっている。ゼロリスク症候群から早く脱しないと、今後の不安定な世界情勢を乗り切れないのではないかと心配になる。