オミクロン対策

オミクロンが未知の変異種として世界中に広がってから1か月が過ぎた.当初は未知のウイルスであり,1か月ぐらいすると性質がわかってくるから,それまで細心の注意を払っていくことが必要ということだった.

さて1か月経って何がわかったかについて日本政府や専門家から公式発表はない.相変わらず,重症化の危険性がわからないので感染対策するようにという注意喚起が続いている.

査読付きの論文として結果が出るまでにはまだ時間がかかるので,これまで有力な研究機関や南アフリカの臨床の現場からオミクロン株に関して報告されていることは以下のとおり.

  • オミクロン株はアルファ株やデルタ株とは別の系統のコロナウイルスの変異種である.
  • ウイルスの性質として,上気道での感染力が強いが,肺細胞への感染力はデルタ程強くない.
  • 感染力がデルタの基本再生産数 8 より大きく,14ぐらいあるという説もある.
  • 経験のある臨床医にとって,デルタとオミクロンは明らかに違う症状であり診れば違いがわかる.
  • 症状として顕著なのは,全身の痛み,倦怠感,喉の痛み,咳,発熱( 38度ぐらい),寝汗.無症状または軽傷で終わるケースが多い.
  • ワクチンによって作られた中和抗体の効きが,デルタ株よりかなり低い(10分の1程度).これはワクチンを打っていてもほとんどの人がオミクロンに感染するレベル.ただし,ワクチンが重症化を防ぐ効果はある.
  • ワクチンの3回目接種で抗体量が増え,オミクロンの感染が予防できる.ただし,抗体量が接種後に徐々に低下することを考えると一時的な対処にしかならない.
  • 南アフリカでは1か月程度でオミクロンによる感染が収束に向かっており,その間,医療のひっ迫は起きていない.
  • 経口薬のなかにオミクロンにも効果が高いものがあり,インフルエンザの特効薬のような役目を果たしてくれそう.
  • 後遺症については情報がないが,味覚障害・嗅覚障害や重度の肺炎が少ないことから考えると,あまり特徴的な後遺症はなさそう.

さて,これらのことから想定されるのは,日本でのオミクロンの感染拡大は止められないということだ.デルタに対しては一時的な集団免疫を形成できたワクチンの効果も限定的.デルタでさえある程度のワクチン接種が進んでいても感染拡大が通常の感染対策では止まらなかったのに,オミクロンであればさらに急速に感染拡大が起きるのは明らか.これは,計算上,基本再生産数が14あるとすると,従来の行動変容で 0.3,ワクチンで0.3に抑えても14× 0.3×0.3=1.26になり感染は拡大する.しかもワクチンの効果が1/10になるとすると0.3を想定するのは無理で0.5も難しい.

では,オミクロンにより地獄絵図のような状況になるかというと,南アや他の国の状況をみるとそんなことはない.風邪のような症状であるので,基本的には体調が悪い人や咳が出る人は自宅で静養して,酷くなったら病院で診断を受け,隔離施設や病院に入院するということをすれば1か月ぐらいで収束する.たぶん,1日に10~30万人ぐらい感染が続くが病床はひっ迫しない.300~1000万人ぐらいが感染して免疫ができると収束する.

市中感染が広がった現段階では,濃厚接触まで隔離するという対策は早く改めて,基本は,感染者は自宅療養にして,隔離施設や入院施設を重傷者のために空けておかないと医療現場が大混乱に陥る.これは多くの専門家が指摘していることで,一刻も早く対処法のシフトをしてもらいたい.風邪レベルの感染症で社会・経済活動を阻害したり,海外との人の交流を止めるのは賢い対処ではない.

個人的な感想としては,3回目のワクチン接種については,この1か月の波を乗り切るために,医療関係者や高齢者・基礎疾患がある人には必要.一般の人にとっては?.個人の自由としか言えないが,健康な若者にとっては,ワクチンの副反応とオミクロンの症状を比べると,オミクロンの症状の方が軽いように思える.受験など,ある一時期オミクロンの感染をどうしても避けたい人は3回目接種すればいい.