南アフリカのオミクロン収束傾向

南アフリカではオミクロン株がまん延していて危機的状況になっているかのような報道が続いていたが,実際はどうもそうでもないらしい.

 

mainichi.jp

記事によると,南アの感染者のほとんどはワクチンの未接種または未完了の人.しかも,これだけ感染が爆発的に広がったにもかかわらず,重症化の割合が低いため,ロックダウンなどの対策を何も行っていない状況でも病床には余裕があるという.これは,長く続いた新型コロナの変異株との闘いが終了に向かう明るいニュースだ.

ただし,記事には保険が掛かっていて,南アは高齢者が少ない国なので,先進国で感染拡大が起きた場合とは影響が異なる可能性がある,という専門家の意見も書かれている.しかし,明らかにワクチン接種者の感染割合が低く,かつ全体的に重症化していないことから考えて,日本のように高齢者のワクチン接種率が90%を超えている状況で高齢者を中心に感染が広がるというのは全く想定できない.もちろん,基礎疾患がある方や免疫抑制剤を使っている人には感染対策が必要なのは,他の風邪やインフルエンザと同様であり,オミクロン株特有のことではない.

南アの新規感染者数のグラフも明らかにピークを越えて収束に向かっている.

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南アフリカの感染状況

日本国内での市中感染も確認されたこともあり,現在のオミクロン株に対する過剰ともいえるレベルの水際対策が科学的・医学的に必要なのかを見直す時期に来ているのではないだろうか.現状,入国者に対して厳格な14日間の自主隔離を要請している国は少ない.感染症の専門家で医師の木村盛世先生も水際対策自体がそもそも全く意味がないと指摘されている.

実際,14日間部屋に軟禁まはた監禁された状態と同様になるのは相当な苦痛であり,ある意味刑罰にも等しい.相当な正当性がなければ人権の侵害になるのは明らかだ.そもそも,国内の感染者に対してもお願いベースの対応であり,強制力のある隔離をこれまで発動していないのに,効果の少ない水際対策により濃厚接触者や感染に関係ない入国者全員に隔離を要請することに公平性や正当性があるのだろうか.しかも現状の入国者の隔離は法律に基づかない誓約書による措置である.実際,入国時に陰性が証明されれば,入国時の誓約書を提出しなければ何の制約もなく入国して生活できる.名前も公表されない.入国時の誓約書を提出しない場合,検疫所長の指定する場所で14日間待機することが要請されるが要請されるだけである(感染していない場合).実際に入国時の誓約書の提出を拒否して,同様な対策を自分でとると宣言して入国した方(弁護士資格を持つ)をYoutubeで見かけた.このあたり法律の知識がないと実行はできないので絶対に勧めませんが.

世の中には感染症対策のため完全な海外との人流を止めた鎖国が可能だと思っている人がいるが,残念ながらこれは空想の世界でしかない.日ごろ食べている食料や建材,半導体,鉄鉱石,石油などの物資が自分で移動して日本に到着しているわけではなく,人が運んでいる.中国では輸入冷凍食品からコロナに感染したという例もある.もし,完全鎖国するなら,これらの物資はすべて止まるとことになる.また,国際的なビジネスを行うためには,海外に人を派遣したり,逆に海外企業から日本に駐在員を派遣したりすることは絶対に欠かせない.日本は資源や食料を持たない貿易立国であり,日本のグローバル企業の利益で成り立っていることの重要性と風邪様ウィルスによるリスクのバランスを考えることを忘れてはならない.