さらに円安

Youtubeなどで円安に関する解説動画やニュースをいくつか見ていて思うのは、ベテランのエコノミストほど現状の分析の説明がしっくりこないこと。現在の円安は教科書にないような前例のない現象で、それを過去の経験や過去の経済指標から理解しようとするとだいたい現在の状況にはあてはまらない。

今円安と株高と日米金利差とインフレが同時に起きている。特に、インフレについて見落としたままドル円の適性価格を公式にあてはめて計算すると現状にフィットしない値が出てくることに気が付いていない。

もちろんベテランの中にも1ドル160円を想定していた人が何人もいるので、ひとによりけりですが、傾向としては経歴が立派で現在も立派な肩書をお持ちの方ほど考えが古いように見える。このあたりは新型コロナのときも同じ。ベテランの専門家ほど未知の状況にリスクをとりながら適切に対応することができず、当たり障りのないことしか言えない。未知の状況にはベテランのアドバイスを聞きながら40歳台ぐらいの中堅が決断力をもってリーダーシップをとる必要があるように思う。今の円安も元をたどれば、コロナ禍対応から平常対応への切り替えが事なかれ主義的政策により、1年ぐらい欧米より遅れたことに原因がある。本来は、欧米のペースに合わせて2022年からコロナ対策よりも経済を回すことを優先して、ゆっくり金利を上げていなければならなかったのに周回遅れになっているため、現状の円安が起きている。

とは言え、もうどうしようもないので、いま直ぐにやらなければいけないのは政策金利の上昇だ。これは誰の目にも明らか。日銀単独で解決できるものではなく、政策として対応しないと解決できない。今すぐ国会で対策を打ち出さないとだめ。このままだと20%といったインフレになってもおかしくない。実際一部の商品は20%ぐらい値上がりしていて、それが物価全体に広がるのに1年の猶予があるかどうか。

政策金利を上げると、中小企業がたちまち困るので、コロナ禍のときのような時限の低金利融資制度による支援を決める。また、住宅ローン金利も上がるので、住宅ローン減税も金利上昇分ぐらい行う必要がある。これらの原資として、日本政府が所有する米国債を日銀に買わせる。今190兆円分ぐらい外貨準備があるので、半分ぐらい日銀に渡してもいいだろう。もともと2000年ぐらいの外貨準備高は現在の1/3ぐらいだったので、その水準まで戻していい。気持ちとしては、米国債を売って為替差益で金利上昇対策を行いたいが、たぶんアメリカの金利上昇圧力になるので反対するだろう。

このタイミングで日銀の日本国債の買い入れも減らして米国債に入れ替えれば、日銀の日本国債保有残高も減らせる。

そもそも円高対策として、円安誘導のために外貨準備を積み上げた結果が今の円安につながているともいえるので、外貨準備を利用しない手はない。ああ、やっぱりドル建ての日本政府の資産を今売りたい。1ドル70円だったドルは、今円換算では倍の価値になっているのだから。誰かうまくアメリカ政府と話をしてもらいたい。決して為替介入としてではなく、純粋な金利上昇対策費用の捻出であるので、内政不干渉を盾にゆっくり売っていけばいい。急激な為替介入は愚の骨頂。日本のFXのトレーダーたちはみんなで為替介入によりドル円が一瞬下がるのを狙って大量の買いを入れている。たとえば、今150円ぐらいで大量のドル買いを入れておくと、たまたま介入にヒットすれば円安に戻るタイミングで大儲けできる。円安対策として為替介入を要求しているひとは全く実情を理解していない。必要なのは為替介入ではなくドラスティックな政策だ。逆に一旦円売りドル買い介入をして、ドルを5円ぐらい上げてから一気に落とした方が効果的かもしれない。道義的に許されないし、明らかな為替操作なのできませんが。

とにかく、今の状況は日銀で解決できる問題ではないので、GW中にでも今年中に大幅な利上げを推進するという政府の姿勢を示して、1ドル160円ぐらいで止めないと底が抜けてアンコントローラブルになってトルコのようになってしまうことが危惧される。非常に危険な状況です。関係者には危機感をもってもらいたい。