円安

日本の外に住んでいるひとの中に、現在の円安がメリットの人とデメリットの人がいる。メリットになっているひとは海外の通貨で給料をもらっている人。現地採用の人。デメリットになっているのは日本で雇用されていて給料が円ベースのひと。この辺の話題を振ってみると、円安をどうとらえているかによってどちらのタイプの人かわかる。

円安の先行きはどちらの人にとっても気になる。エコノミストによると、現在の状況が続けば1ドル160円、そのうち200円もありうるということだ。このところ、1ドル151.8円という謎のレートで円安傾向が止まっている。日米の金利差があるので、円からドルへの流れは止められるとは考えらない。米ドルの定期預金の金利が年4~5%のときに、年0.02%の円定期預金に預ける人はいない。もちろん為替レートの変動があるので、年で5%円高になると金利分は消えてしまうのだが、ドルから円に換えずに保持しておいて、いつかまたドル高になったときに交換すればいいだけなので余裕資金である限り特には問題ない。

円買いによる為替介入を期待する声もあるが、大きな金利の高低差があるかぎり介入してもすぐに元のレベルに戻るだろう。G7も原則為替介入は禁止としている。もし将来第2期のトランプ政権が誕生した場合、日本が今為替介入を行ってしまうと為替操作国に認定されてしまう危険もある。

そもそも今は円安ではないとも考えられる。現状の日米の物価格差が生まれた理由は欧米のインフレだ。2021年に日本で1個100円(=当時1ドル)でリンゴが1個買えたとして、アメリカで物価が急上昇してアメリカ国内でリンゴ1個が2ドルになったとする。しかし日本で生産されるリンゴは100円のままなので、本来は1ドル50円の為替レートにならないと物の値段が釣り合わない。しかし、インフレに合わせて為替レートはすぐには動いてはくれない。日本では1個100円でリンゴが生産できることは変わらないのだから。実際は燃料代や肥料代など輸入品の値段が高くなるため日本の物価が上がって、そのうちリンゴが1個200円になったとすると1ドル=100円に調整される。現状1ドル150円なのでこのケースではもっとインフレになることを意味している。結局、今は円安なのではなく、日本がインフレになって物の価値が調整されようとしている過程にあると考えるべき。他国のインフレによって起きた物価の歪を為替レートだけで調整できると思うのは楽観的すぎる。

結局、円安を止めるには誰でもわかるように日米の金利差を徐々に縮小して円貯金の流出を止めることが大前提で、これにプラスして日本の物価を欧米並みに上昇させるしかないように思う。その場合、最低賃金が時給2000円以上になることもありうる。また今の日本の株高は将来のインフレを織り込んでいると捉えれば、今の株価が高すぎるわけではないと気付く。エコノミストが指摘しているように企業業績も株価と釣り合っているのでバブルとはみなせない(もちろん地政学的な問題や災害、どこかの国の経済急落など予期しないイベントで株価が急落する可能性は常にあります)。