今回の新型インフルエンザが従来のインフルエンザと毒性があまり違わないかもしれないということで、本当によかったと思います。

もちろん従来のインフルエンザでも罹ると相当辛いのですから楽観はできません。

今回、日本の新型インフルエンザ対策がうまく機能しないことがわかりました。確かに行動計画は作成してありましたが、あまり役にたっていないように見えます。というよりも、強毒性を想定した1本のシナリオしか準備していなかったため、不幸にして弊害の方が大きかったとも言えるかもしれません。

いま行政も住民も軽いパニックになっています。発病したひとがマスクを買えない(健康な人がたくさん買い占めている)、神戸の病院の隔離ベッドはすでに不足気味、検査キットが足らない、タミフルも末端では不十分、過剰反応による広範囲な休校。イギリスでは100人近い感染者が出ていますが、感染者は一次感染者とその周辺に抑えられていて、全体としてはまったく平穏な日々をすごしています。豚フル(イギリスでは未だにswine flu)は最近ではニュースにもなりません。

今回の日本の対応を見ていてわかったことは、

  • 行政はWHOの助言を素直に聞くべき。
  • 海外の対策の先例に素直に学ぶべき。
  • 「とりあえず休校」みたいな直感による政策ではなく、医学的な根拠に基づく政策を行政の長が腹をくくって柔軟にとる。
  • そのためには、行政の対策を本当の疫学の専門家が指揮すべき
  • 機内・船内検疫、集団停留はインフルエンザには無効。
  • 企業や大学による海外への渡航禁止・自粛は無用。海外では蔓延国への渡航のみ対象。
  • 夏になっても収束するとは限らない(昨年沖縄で夏インフルエンザが流行っている)。
  • 早期の時点で、新型インフルエンザの発症者をいかに漏れなく早くみつけるかが勝負。感染者が名乗り出やすい環境と、十分な数の簡易検査キットと相当な処理能力のPCR検査体制が必須。
  • 検査キットは有効期間が短いため備蓄できないので、オンデマンドで大量に供給できる体制が必要。
  • 強毒性のものが発生した場合、各地にかなりの広さの発熱外来が必要。現状ではすぐにベッドが埋まってしまう。たとえば、市民体育館や公民館を臨時の発熱外来にするための機材が必要。
  • さらなるタミフルリレンザの備蓄が必要。特にリレンザの備蓄が少なすぎる。タミフルは副作用に関する疑念がまだ消えていない。このままでは、本番の今年後半の第2波以降や鳥フルの発生の際に使う抗ウィルス剤が不足してしまう。
  • それでも強毒性のインフルエンザが蔓延期に入ってしまった場合は、多少危険がともなっても希望者が十分な医療支援のもとで生ワクチンを受けることが最後の手段になるかもしれない。
  • 学校閉鎖は無意味。生徒がただ友達と遊び歩いてウィルスを町中に広めるだけ。
  • 強毒性の場合には、医者や看護婦が健康被害を受けた場合に、損害を保障する制度が必要。

今のままでは、本当に危険なインフルエンザウィルスが発生したとき、大混乱を起こしそうでとても心配です。