水際対策緩和

5月5日に岸田総理がイギリスで行われた会見で「6月には他のG7(先進7カ国)諸国並みに円滑な入国が可能となるよう水際対策を緩和する」「日本は世界にオープンだ。ぜひお越しください」と明言している。演説のビデオを確認したところ、この通りの発言をヘッジなしでされています。

想像するに総理も実際に海外の国々を歴訪してみて、それらの国では新型コロナは過去のものとなっていることを実感し、日本の感染対策がレトロな状態になっていることに気が付かれたのではないかと思う。たとえば、現在、イギリスなどではマスク着用の義務はなくなっていますし、イギリス入国にあたってのPCR検査や入国後の隔離も完全になくなっています。報道によれば、総理は周辺にも「状況が変わった。国内の感染状況と水際の話はもはや関係ない。水際緩和で感染者数が増えているわけじゃないし」と語っているという。

イギリスで、G7並みに緩和すると明確に宣言したということは、6月にはコロナ前の入国審査に戻しビザ免除国についてはビザ免除を再開し、日本入国の際の検疫も撤廃するか、少なくとも大幅に簡素化するということだとイギリス人は受け取ったはずだ。

政府内では6月から入国者数の上限を2万人に増やすという案も出ているようだが、これではG7並みの緩和には程遠く、岸田総理の意向から大きく外れている。なぜなら、2万人という人数制限を設けるということは、事前に入国者を日本政府が把握するということであり、すなわち訪日客はビザの発給をうけないといけないということになる。日本に入国するのにビザがいるのなら面倒なので、やめてシンガポールニュージーランドなどの他の国に行こうと思うひとはたくさんいるだろう。これは観光だけの問題ではなく、ビジネス面でも同じ影響がある。海外企業がアジア支社を設立するとき、ビザがいる国と要らない国を比較すれば、当然ビザの要らない国を選択する。

しかも、現在の水際対策では、日本に入国するためには日本国内に受け入れ責任者がいないといけない。受け入れ責任者は、入国した人がコロナ対策をとることや万一感染した場合の支援をすることを義務付けられる。確かに、コロナがデルタ株の頃までなら、誰かが国内で訪日客のお世話をしないといけなかったかもしれないが、オミクロン株では軽症な場合がほとんどであることから、必要に応じて本人が医療機関で診察を受けるなどの対応で十分だろう。そもそも、オミクロン株については、感染者の制度的な隔離の必要性もなくなってきている。季節性のインフルエンザと同じように、体調が悪ければ家やホテルで休養して、さらに悪くなれば病院で診察を受けて、運悪く症状が重ければ入院すればいい。

現状の毎日3万人程度の感染者数であれば、国内のコロナ病床の使用率は10~30%であり、重症者病床もガラガラの状態だ。この現状を冷静に考えると、そもそも今の国内の新型コロナ感染者対応を何のためにやっているのかわからなくなってくる。

 

下記のNHK都道府県別の病床使用率より引用

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/hospital/