飛行機に乗りそこなうという話を16日に書いたのは何かの予感だったのか。また、ボーディングパスを持ちながら飛行機に乗れないという事態に遭遇してしまった。

ドイツ経由でイギリスから日本へ向かう予定だった。朝早くおきて、充分な余裕をもって空港に行き、チェックインをすませ、日本までのボーディングパスを手に入れた。心配したセキュリティチェックも10分ぐらいで通りぬけ、これで一安心と思いながら、バーガーキングの紅茶を飲みつつ、悠々と最初の飛行機の搭乗ゲート番号が電光掲示板に出るのを待っていた。

すると、なにやらキャンセルの文字が私の乗るはずの飛行機に出ている。まさかと思っていると、アナウンスでキャンセル便の乗客はフライトインフォメーションへ行けといっているではないか。きっと別の便に振り替えてもらえるのだろうと思いながら、インフォメーションへ行ってみると、「あの黄色い服の人に聞け」といわれた。その黄色服の兄ちゃんは、航空会社の人間のようでこちらについて来いと、私をどんどん空港内に連れて行く。ロックのかかったドアを抜けて、つれてこられたことろは入国審査。これが村上春樹の小説なら、どこか地下のトンネルの奥の小部屋に連れて行かれるのだろう。実際に着いたところには、キャンセル便の他の乗客が入国審査場にならんでいた。

入国審査官は不思議なことを聞く。「まだ英国で働いているのか」って、まだどこにも行ってないんだから状況が変わるわけがない。入国審査を抜けると、バゲッジクレームで荷物を取れといわれる。ここで全て理解できた。つまり振り出しに戻ったということだ。スーツケースを受け取って、キャンセル便の乗客の一団が連れて行かれたところは、チケットカウンター。既に50人ぐらいが並んでいて、順番にチケットを再発行している。みんな文句言わずに並んでいるのだから偉いものだ。結局2時間ぐらい列に並んでやっとチケットを再発行してもらえた。この間もちろんずっと立ちっぱなし。空気は悪いし、咳をしている人はいるしで、精神的にも肉体的にもかなりのダメージである。しかし、試練はこれで終わらなかった。

再発行されたチケットはドイツで2回乗り継いで、日本に帰るというルート。ドイツから日本へのフライトは急なキャンセルの後に取ったため、いつも必ず選択する通路側がとれなかった。これはかなり疲れそうだと思いつつ、約1時間後に出発のドイツ行きの飛行機に乗るべくセキュリティチェックへ向かうと、午前中とは打って変わって長蛇の列。ショックだった。以前、これぐらいの人数で1時間ぐらいかかった経験があるのでかなり肝を冷やした。実際は30分ぐらいで抜けられたがさらにストレスがたまる。

踏んだり蹴ったりというのはこのことで、ドイツ行きを待っていると、なぜか出発予定時刻がどんどん遅れていく。おいおいそんなに遅れると乗り継げないぞ、と心配していると、なんとか40分遅れぐらいで出発予定となった。飛行機は遅れながらもイギリスを飛び立ちドイツへ到着。あまりに疲れたので機内ではほとんど気を失っていた。

無事ドイツに着いたのは良かったのだが、着いた時間は次の便の出発時刻のわずか5分前だ。あわてて飛行機から走りだすと、そこには入国審査が。。。強行突破するわけにも行かないので入国審査を待っていると、乗り換えの客は○番ゲートへ急げという係員の人が英語で言っている。なんだかわかないが入国審査を抜けてすぐ近くのゲートへ駆け込むと幸い私の乗り継ぎ便のゲートだった。ほんと滑り込みセーフという感じだ。とりあえず、定石通り1日分の着替えは持っていたので、万一ドイツ泊になってもそんなには困らなかったが、次の日に飛行機が取れる保証はない。予定通り進むのが一番だ。

さて、またもや憔悴しきっていたので、飛行機の中で眠っているうちに、第二の乗り換え空港に着陸。ここで国際線に乗るためか非常にセキュリティがきつかった。ドイツ人の本領発揮という超厳格なボディチェックを受け、金属探知機でガムの銀紙さえ見逃さないほど調べられる。なんらかの理由で、セキュリティレベルが上がっていた模様。たぶんキャンセル便がいくつか出ていたのもそのせいなのだろう。

数々の苦難やトラップを乗り越え、なんとか日本への飛行機に乗ることができた。結局通路側の席はとれないまま窮屈な12時間となった。映画を2本見たが、あとは寝ていたように思う。ほんとうにひどい目にあったが、なんとか成田まで帰ることができた。

めでたしめでたし。と言いたいところだが、さらに試練は続く。なんとスーツケースが届いていないのだ。きっとドイツでの最初の乗り換えで荷物を積み替えられなかったのだろう。結局、翌日に送ってもらうことになった。スーツケースは航空会社が代理通関してくれるというので鍵を渡す。(こういうこともあるので、スーツケースの中はきちんとしておかないといけない)

トータル24時間あまりのイギリスから成田までの行程となった。ほんとうに死ぬほど疲れた。神様に人間力を試されたような気がする。