コロナ実質的に収束か

相変わらず感染者は出ていて、いまだにTVでも毎日のように感染者数の増減を取り上げています。一方、それにも関わらず5月以降重症者の数は順調に低下し、今は全国にコロナの重症者は36人しかいないことにはあまり触れません。病床もガラガラですので、今の10倍ぐらい感染者が増えても医療は提供できそうです。

重症者(厚労省データ)

厚労省のデータを元に1月以降の男女のコロナ死者数を年齢別に累積してみると、死者のほとんどが70歳以上だということがわかります。

 

1月からの男性死亡者数(累計)

 

1月からの女性死亡者(累計)

感染者がある程度いたとしても、重症者はほとんどゼロ、死者も平均寿命に近い方やそれを超えた方、ということを考えると、もう特別なコロナ対策が必要な時期は終わっているという気がします。インフルエンザと同様、感染しない方が良いに決まっていますので、ひとり一人が感染しないように気を付けることは大事ですが、人数が多い会食を制限するとか、アクリルボードを挟んでTV番組出演者が並ぶとか、球場で声を出して応援してはいけないとか、球場でマスクをしないといけないとか、不要でしょう。

 

早く濃厚接触者の認定もやめて、万一感染したらインフルエンザと同様に休む、ということで十分です。こういうと5類相当への格下げの話が出てきて、話が進まなくなるのですが、濃厚接触者の認定は都道府県知事がやめるといえばやめられます。コロナ感染時の対応も、現状では別に法律で決まっているわけではありません。実際、感染症法で1類の準用が適用されるのは、省令で1類準用を指定されている高齢者や基礎疾患のある人など、ごく限られた人だけです。一般の人を強制的に指定病人に入院させることは(コロナ初期と違って)現在はできませんし、入院させなくてもいいことになっています(だから今は自宅療養で良いことになっているのです。もし1類準用(いわゆる2類相当)のままであれば、法律上コロナ患者は全員強制的に指定病院に入院になります。だって1類はエボラ出血熱などと同等の危険な感染症ですからね)。

 

 

ビザ申請についての在外大使館・領事館の対応

6月1日からの入国者上限2万人に向けて、海外の大使館・領事館にはビザ申請が大量に発生しているはず。このあたりニュースバリューがあるのでTV局は取材するといいですよ。6月10日からは観光目的の少人数のツアーも認めるのですが、こちらもビザが必要なので、各国で相当数のビザ申請が発生するのは明らかです。

 

これまでビザなしで入国できた欧米各国の公館は、従来、短期のビジネスや観光でのビザ処理をしていないので、通常より1日千件ぐらい多いビザ申請を受けている公館もあるのでは。これに対応するために、公館によってはビザを受け付ける外部機関をいくつか指定している。つまり、大使館・領事館が直接ビザ申請を受けると手がまわらないので、入り口の部分を外部委託しているようだ。

 

苦肉の策ということだろうが、それよりも国を絞ってビザ免除を復活させるのが正道ではないかと思う。上限数を制御したいなら、アメリカのESTAのように(少し目的と用途は異なりますが)、入国者自身が事前に有料で入国期間の登録をするようにすればいいのでは。入国日を申請して、前後数日ならずれてもよいということにしておけば、だいたいの入国者数は把握でき、制限もかけられる。そもそも人数制限が必要かという問いは別問題としてあります。とにかく入国者数を把握して上限を設定するためにビザを要件にするのは限界が来ています。このままでは各国からビザ認定が遅いという苦情がでるのは自明。旅行者の目から見ても、現状ではG7レベルの入国緩和には程遠い状況です。ビザが必要かどうかで旅行準備の負担は大きくかわります。

業界からの水際対策緩和に関する要望書

5/12に観光振興協会、旅行業協会、ホテル協会、ホテル連盟、民営鉄道協会、ANAJAL、JRなどが連名で国土交通省に水際対策緩和を申し入れた。

 

www.travelvoice.jp

要望書のPDF

https://www.jata-net.or.jp/about/release/2022/pdf/220512_demandmizugiwaattempe.pdf

 

申し入れのポイントは、①観光目的の入国再開、②入国人数制限の撤廃、③外務省感染危険情報レベルを1に修正の3点。当然、これらはビザ免除による入国の再開を意味している。ゼロコロナ政策の国や帰国後の隔離制限が厳しい国からの観光客はほとんどいないだろうが、それでも欧米からの観光客が戻るだけでも業界としてかなり助かるだろう。

これらの要望を行うことは、コロナ禍による過酷な業績低下にあえぐ観光旅行業界にとってしごく当然のことだろう。そもそも今のオミクロン株の感染状況で、新型コロナを感染症1類に準用して水際対策を実施するほどの危険度があることを立証できるだろうか(テクニカルには厚生省の省令に沿えば高齢者や基礎疾患がある人以外にはオミクロン株は感染症の1類準用の対象でなくなっていて、またオミクロン株自体が特措法の対象にもならない可能性が高い)。これらの団体が本気で訴訟を起こせば、今の入国制限を撤廃に持ち込める可能性は高いだろう。

テレビでは相変わらず感染者数を伝えている。しかし、マスコミ、特にNHKは感染者数だけでなく、病床の使用率や重症者数のグラフも併せて伝えるのが公平な報道機関としての役目ではないだろうか。

NHK全国重症者数の推移

蛇足だが、オミクロン株は季節性インフルエンザより致死率が数値上10倍高いということを根拠に依然としてオミクロン株が危険とする説は続いているが、本当にそうだろうか。以前調べた数値では、オミクロンとインフルエンザの致死率はほぼ同じであった。また、今ではインフルエンザには特効薬があるので見かけの致死率が下がっている。特効薬以前も普通に社会生活をしていたわけなので、そこ時点と致死率を比較しないと危険性は問えない。実感として、今の感染状況と重症者数を見ているとインフルエンザと比較してそんなに危険だとは感じられない。

コロナによる死者の平均年齢も80歳代で平均寿命に近いケースがほとんど。純粋にコロナで死亡しているといっていのかどうか怪しいケースも多い。国際的なコロナの統計の取り方の基準により、どんな死に方をしても死んだ時点でコロナに感染しているとコロナの死亡者としてカウントするというルールがある。そのため、極端な場合、交通事故や脳卒中で死亡しても、死後の検査でコロナに感染していると分かるとコロナの死亡者数にカウントされる。高齢者がコロナにより亡くなることはとても残念なことであり、家族はもっと生きてもらいたかったと感じるだろうが、平均寿命に近い高齢者のコロナ死者数をコロナの危険性をはかる数値として使っていることが、インフルエンザの危険性と比較するうえで、本当に妥当なのかというと大きな疑問が残る。

6月からは相互主義に基づくビザ免除でどうでしょう

岸田首相が世界に向かって公約した「G7並みの入国制限緩和」を実現するにあたって、相互主義に基づいてビザ免除を再開すればいいのではないだろうか。もちろん観光目的の入国も認める。現在、対象となる国は少なく、G7各国に加えて、オーストラリアやニュージーランドシンガポールぐらいかもしれないが、これらの国を対象にビザ免除を再開して、様子を見ながら広げていけばいいのではないだろうか。

日本からの入国に制限をかけていない(ワクチン接種者については、隔離期間が無く事前の陰性証明も求めない)国について、その国からの入国には面倒なビザ手続きやPCR検査を求めることの正当性があるとは思えない。国の間の感染状況が異なるのなら話はわかるが、欧米の国の感染者のレベルから見ると日本と同等か日本の方が感染状況が悪い地域もある。変異株の懸念はあるが、変異株というのは海外から来るだけでなく、日本国内で自然発生するリスクも十分もある。日本からの入国制限を撤廃した国は、日本で発生した変異株が流入するリスクよりも入国の活性化のメリットを重視しているのだ。

また、今のビザによる日本入国は1日2万人を上限とした場合には間違いなく破綻する。日本の在外公館(大使館・総領事館)は世界に220カ所あるが、毎日2万人を継続的に受け入れるということは、世界で毎日2万人分のビザ承認をしないといけない。もし、申請に地域的な偏りがなかったとしても、単純計算で1公館あたり毎日毎日約100件の申請を処理しないといけない。公館が休みの日の入国があることを考えるともっと処理数は増える。実際は欧米などにビザ申請が集中して偏りがあるので、毎日1000件ぐらいのビザ審査をしないといけない公館が出て来る。これが通常業務にプラスされるのだから業務量的に無理がある。

また、成田空港で検疫のために7時間~9時間待たされたというニュースもある。平均的には2~3時間ぐらいのようだが、それでも長すぎる。G7並みの入国を実現するためには、先進国からの入国については検疫を撤廃しないといけない。水際対策が効果あった時期は3ヶ月ぐらい前に終わっていて、国内毎日5万人ぐらいが市中感染しているのだから、現時点では水際対策は全く無意味になっている。

ロックダウンが各地で続く現在の中国の状況を見ていると、中国から観光客が来る時期は相当先になりそうだ。今中国から日本に来た人は、多分帰国後に地元で相当な圧力を受けるだろう。また、中国が隔離期間なしに外国人を受けれるとは思えないので、日本入国時のビザ免除も当面は実現できそうにない。韓国も、済州島に限りノービザを始めようとしているが、現状では入国にビザ取得が必要となっている。

水際対策緩和

5月5日に岸田総理がイギリスで行われた会見で「6月には他のG7(先進7カ国)諸国並みに円滑な入国が可能となるよう水際対策を緩和する」「日本は世界にオープンだ。ぜひお越しください」と明言している。演説のビデオを確認したところ、この通りの発言をヘッジなしでされています。

想像するに総理も実際に海外の国々を歴訪してみて、それらの国では新型コロナは過去のものとなっていることを実感し、日本の感染対策がレトロな状態になっていることに気が付かれたのではないかと思う。たとえば、現在、イギリスなどではマスク着用の義務はなくなっていますし、イギリス入国にあたってのPCR検査や入国後の隔離も完全になくなっています。報道によれば、総理は周辺にも「状況が変わった。国内の感染状況と水際の話はもはや関係ない。水際緩和で感染者数が増えているわけじゃないし」と語っているという。

イギリスで、G7並みに緩和すると明確に宣言したということは、6月にはコロナ前の入国審査に戻しビザ免除国についてはビザ免除を再開し、日本入国の際の検疫も撤廃するか、少なくとも大幅に簡素化するということだとイギリス人は受け取ったはずだ。

政府内では6月から入国者数の上限を2万人に増やすという案も出ているようだが、これではG7並みの緩和には程遠く、岸田総理の意向から大きく外れている。なぜなら、2万人という人数制限を設けるということは、事前に入国者を日本政府が把握するということであり、すなわち訪日客はビザの発給をうけないといけないということになる。日本に入国するのにビザがいるのなら面倒なので、やめてシンガポールニュージーランドなどの他の国に行こうと思うひとはたくさんいるだろう。これは観光だけの問題ではなく、ビジネス面でも同じ影響がある。海外企業がアジア支社を設立するとき、ビザがいる国と要らない国を比較すれば、当然ビザの要らない国を選択する。

しかも、現在の水際対策では、日本に入国するためには日本国内に受け入れ責任者がいないといけない。受け入れ責任者は、入国した人がコロナ対策をとることや万一感染した場合の支援をすることを義務付けられる。確かに、コロナがデルタ株の頃までなら、誰かが国内で訪日客のお世話をしないといけなかったかもしれないが、オミクロン株では軽症な場合がほとんどであることから、必要に応じて本人が医療機関で診察を受けるなどの対応で十分だろう。そもそも、オミクロン株については、感染者の制度的な隔離の必要性もなくなってきている。季節性のインフルエンザと同じように、体調が悪ければ家やホテルで休養して、さらに悪くなれば病院で診察を受けて、運悪く症状が重ければ入院すればいい。

現状の毎日3万人程度の感染者数であれば、国内のコロナ病床の使用率は10~30%であり、重症者病床もガラガラの状態だ。この現状を冷静に考えると、そもそも今の国内の新型コロナ感染者対応を何のためにやっているのかわからなくなってくる。

 

下記のNHK都道府県別の病床使用率より引用

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/hospital/

抗原検査で十分?

コロナの正規の検査といえばPCR検査と思い込んでいる方々が多いと思いますが、アメリカ行きの飛行機に乗るとにき提出が義務づけられているコロナの陰性証明書は、PCR検査の結果に加えて、抗原検査の結果も認められています。

PCR検査は早くても4時間、長いと24時間以内や48時間以内の判定になっています(2時間で結果が出る検査機関もありますが稀です)。これの何が問題なのというと、アメリカ行きの飛行機に乗る場合、搭乗前の1日以内の検査結果の提出が義務付けられており、もしPCR検査を選択すると前日に検査をするか、当日朝に検査して、空港で何時間も検査結果を待って、夕方の飛行機に乗ることになります。これは現実問題としてかなり不便です。一方、抗原検査は15分ぐらいで結果がでますので、旅行日程にほとんど影響を与えません。なお、抗原検査はアメリカが承認している方式で、証明書も英語でないといけません。普通の病院で出される日本語の抗原検査結果は使えませんので良く確認してから検査を受けてください。困ったら、空港に設置されている医大が主催している検査所に相談すると良いと思います。

日本は相変わらずPCR検査だけを正式な検査とするという認識ですが、コロナの状況も変わってきていますので、潔癖主義のような検査にする必要はなく、日本入国時の正式な検査として抗原検査を認めてもらいたいものです。これだけで、コロナ対策を実効的に緩めることなく、日本への帰国が各段に楽になります。現在、アメリカ入国よりも日本帰国のためのPCR検査が重荷になっています。日本への帰国時に日本行の飛行機に乗る72時間以内のPCR検査結果が必要で、帰国前にアメリカの街中のPCR検査機関に行って日本仕様の書類に検査結果を記入してもらう必要があります。

以前の抗原検査キットの精度は不十分でしたが、今検査機関で正式に行う抗原検査であれば十分精度が高いので正式な陰性証明として認めてもいいと思うのですが。抗原検査であれば15分で結果が出ますので、帰国時に空港で受けても十分に搭乗に間に合います。さらに言えば、オミクロン株の重傷者病床の使用率を見ていると、ワクチン接種をしていれば事前や入国時の検査自体もそもそも不要なように見えます。シンガポールなど、入国時の検査が廃止する国が増えています。そもそも現在のオミクロンの症状と重症度で、感染症1類(エボラなど)を対象にしたような防疫措置を発動していることが法律的に大丈夫なのかという疑問があります。

 

 

水際対策緩和

3月から水際対策がやっと緩和されるようです。

今や何のための水際対策なのかよくわからなくなってしまいます。これだけ国内で市中感染が爆発しているときに、海外からの感染者の入国を恐れて何の意味があるのかよくわかりません。「海外からの入国者=濃厚接触者」ではないので、何の疑いをもって入国者の隔離を継続しているのか??? しかも現在、保健所の業務逼迫により、濃厚接触者の多くが実質的に野放しになっている状況です。オミクロン株を国内に入れないための水際対策強化だったはずですが、すでに国内でオミクロンがまん延しているわけですので、海外からの入国を止めることによる国内での感染抑制の効果はゼロです。しかも国際ビジネスのための人の往来が大幅に制限されていますので経済面での打撃は重大です。現在の水際対策はデメリットしかなく、赤点どころかマイナス点の施策になります。

少なくとも、海外からの入国者の扱いは、濃厚接触者より軽くないとバランスがおかしいように思います。濃厚接触者は感染している疑いが強いわけですが、海外からの入国者は国内の普通の人と同じぐらい感染していない可能性が高いです。海外から新しい変異種が持ち込まれることを危惧する専門家もいますが、そんなことをしていると永遠に変異種に怯えながら、日本は鎖国を続けないといけなくなり、旅行・観光業や国際的なビジネスは停滞して、海外からの新規投資を失うだけではなく、現在の海外からの投資も引き上げられていくことでしょう。最近の物価高も水際対策による国際流通における日本のプレゼンスの低下が遠因なのかもしれません。