円安と国力

一瞬1ドル160円の円安に達したこととでがっかりしているひとたちがいるようです。日本の国力が50年ぐらい前に戻った、日本が衰退したような嘆きもみかけます。でも本当にそうでしょうか。

今の円安は1ドル70円になったときの経験から円高対策として、継続的に円が弱くなる方向に誘導してきた結果であって人為的なものです。為替操作国と言われないようにゆっくりと円安に誘導してきました。そのツールの一つは、円を大量に流通させて円の価値を下げる日銀の異次元緩和策、もうひとつはあまり注目されていませんが、外貨準備高の積み上げです。外貨準備高はこの20年で3倍ぐらいに積みあがっている。そりゃ100兆円ぐらいドルを買ったら円安ドル高になるのは当然です。10兆円の為替介入でドル円が5円下がるとすると、単純計算で100兆円で50円下がることになるので、1ドル100円まで下がる計算になる。つまりはそういうこと。アメリカもアメリカ国債を日本が買うことには文句を言えないので円安誘導を放置してきたのかもしれません。

今後の方向も、新NISAで米株への投資が続く限り円安基調だろう。また、その基調にそって円からドル定期にする流れも加わる。円が世界中の通貨に比べて弱くなっているというデータもあり、日本の衰退のサインとして受け取られているが、あれはたぶんオルカンが原因。オルカンは全世界の株に投資する投資ファンドで3兆円ぐらいの資金を集めていて、今も新NISAの広がりとともに資金が増えている。オルカンを書きましたが、正確には世界株投資ファンド新興国投資ファンドなどを含むグローバル投資が原因でしょう。1月には1兆円近いの個人の貯蓄が新NISAの投資になった。これからもものすごい勢いで銀行で遊んでいる円の貯蓄をつかって国民が全世界の株や資産に投資していくので、当然すべての通貨に対して円が弱くなるのは当然。

このような現象を単純にとらえて、日本が衰退しているというのは間違った見方でしょう。確かに、物価という面で日本は他の国より相対的に安くなっているのは問題なのですが、前にも書いたように日本では昨年海外で起きたようなハイパーインフレが発生しなかったので、物価に差が開いているだけで国力の問題ではない。とはいっても、この状態がいいわけではないので利上げや最低賃金の増額などの対策をとって、早急に現在に発生している物価の不均衡を是正しないといけません。