少し別の角度から見てみると、中国政府は今回軍事力に言及することなく思い通りの成果を得た。これは、暴走しかねない中国軍部に口を出させることなく、国際問題を解決したという点で見事だ。場合によっては、中国指導部の責任問題にもなりかねないところだった。

これと反対に、日本の対応はまったくの静観主義で一方的にやられぱなしの状態。本来は、国連で日本の正当性をビデオや古地図を使って訴え、中国というのはこんなに横暴だということを世界に印象づけるべきだったのに、なにもしていない。その代わりに「最小不幸社会」のお題目を唱えて時間をつぶし、日本を最大不幸な国にしてしまった。

もう一点注目すべきは、那覇地検の会見。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100925ddm001040008000c.html

鈴木亨次席検事は記者会見で「我が国国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当ではないと判断した」と述べ、

ここに注目したい。本来、とびきりの秀才である検事なのだから、「外交関係とは無関係に、純粋に証拠を検討して釈放を決めた」というはず。にもかかわらず、「日中関係」に言及したということは、相当な不満を心の中にもって、故意に本来の検察の権限を逸脱した外交的側面に言及したのだろう。もっといえば、政権や検察上層部への暗黙の抗議の意思が読み取れる。鈴木次席検事は、たぶん検察の威信と正義のために、国会の証人喚問を受ける覚悟で発言したのではないだろうか。考えすぎかもしれないけど。

どちらにせよ、菅政権は早晩終わるだろう。支持率も急落、下手すると1ケタに下がるかもしれない。中国政府はそこまで追い詰めてくる。はたして、現在拘束されている4人を救出するために、現政権が中国製品への100%輸入関税やODA円借款の停止、中国人の入国制限、中国への渡航禁止、最悪大使の召還といったカードを切れるのか。