久しぶり(たぶん10年ぶり)に映画館で映画を観ました。

イングロリアス・バスターズクエンティン・タランティーノ監督、ブラッド・ピット主演の戦争映画です。

まだ日本では上映されていないようですが、いろんな批評でも評判がよく、実際、先週のアメリカでの興行成績のトップになっています。男くさい映画とも宣伝されています。

でも、この映画にはいろんな見方がありそうです。勝手な想像になりますので話半分になりますが、タラティーノのファンは、映画の中のいろんなオマージュを見つけて楽しむのでしょう。アメリカ人とユダヤ人、フランス人は見終わってスカッとするのでしょう。ドイツ人は。。。たぶんこの映画は見ません。映画館で、イギリス人は拍手喝采することもなく案外静かに観ていました。ときどきヒソヒソと話していますが、見終わってもただ黙々と映画館を去っていくだけです。ヨーロッパでのこの映画のとらえ方は難しい。

私にはこの映画はコメディ映画に見えました。タランティーノのにやけた顔がスクリーンのなかに常に薄く広がって見えるような気がしました。常に「どうだ面白いだろう」、とタランティーノに語りかけられているような気分でした。ミナミの帝王竹内力のようなしゃべり方をするブラピ(もちろんそういう南部訛の演出)。深い構成に基づかないストーリー展開。マンガ的な映像表現。いかにもなBGM。軽く描かれる残虐シーン。しかも、なんとなく変な後味が残ります。

その中で、光輝いていていたのがナチのSS将校役のクリストフ・ヴァルツ。映画の中では、言語が英語だけでなく、場面に合わせて目まぐるしく変わり、英語以外のときは字幕になります。その中で、彼は英語、ドイツ語、フランス語をほぼ完璧に話します。これは劇中だけでなく、実際にこれらの言語(さらに他のヨーロッパ言語)が話せるようです。ヨーロッパには、両親がフランス人とドイツ人で、イギリスに住んでいるということはざらなので、2,3ヶ国語をほぼネイティブレベルで話す人はよくいますが、さらに演技もうまいとなるとかなり凄いことです。彼が今年のカンヌ映画祭で男優賞を受賞したことに納得です。映画の良さというよりは彼の才能によるところが大きそうですが。

べつにこの映画をけなすつもりはないのです。実際、2時間半という長さは感じさせませんので、途中で飽きさせない映画であることは間違いないです。ただ、この映画をまともな戦争映画だと思うと拍子ぬけします。監督が映画おたくのタランティーノだということをお忘れなく。