どうしてもアメリカがすべての分野で世界の最先端で日本は遅れている、と思ってしまいがちです。アメリカ人自身もそう思っているようです。

実際には思っているほどそうではありません。

まず携帯電話。アメリカでは、3Gが使える範囲が限られているのでデータ通信が遅い。だからアメリカでiPhoneを使っても、日本やヨーロッパで使うほど快適ではないのです。

次に、ブロードバンド。アメリカでもADSLは普及していますが、各家庭に専用の光ファイバがつながるなんてことはないです。無線による代替手法は多少あっても地域が限られます。ケーブルテレビのファイバもありますが、帯域が共用になりますので、日本のようにかなりの地域の家庭でインターネット専用の100Mの光ファイバが使えるというのはまだまだ先でしょう。

変わったところでは健康保険。アメリカでは国民健康保険のような制度がないため、もし大きな病気をするとかなり裕福な家庭しかその医療費を払えません。それまで健康に働いていて、プライベートな保険をかけられる(または職場がかけてくれる)うちはいいのですが、運悪く一度病気をして仕事を失うと、その後のセイフティネットがまったくなくなります。

あとは、教育。アメリカの高校までの一般の教育は日本に比べるとレベルは高くありません。アメリカでは一部の裕福で高学歴な家庭が子弟を良い私立学校に入れて、日本の進学校のような教育を受けさせていますが、一般家庭でそのレベルの教育を受けるのはかなり難しいでしょう(特別に優秀なら特待生のような可能性はありますが)。

公共交通機関も整備が遅れています。特に鉄道網の整備はなかなか進みません。車社会と言ってしまえばそれまでですが、たとえば事故や病気で手足が不自由になったり、高齢で車が運転できなくなると、生活できなくなってしまうのです。十分な資産があればいいのですが、そうでない人はどうしているのでしょう。

それに治安。景気が良い時はいいのですが、景気が悪くなると犯罪でしか生きていけない人たちが急増します。

こういうインフラ部分で遅れはじめると、国としては厳しいですね。もちろん、大国アメリカが急に没落するということはないでしょうが、金融バブルがはじけて、ドルが基軸通貨の1つにランクダウンしはじめているなかで、今後はこれまでほどの優位性は保ちきれないでしょう。

実際、最近アメリカ人が職をもとめて、イギリスに応募してきたりしています。そして、彼らはイギリスに住んでアメリカよりも住みやすいことに気がつくわけです(日本語さえできれば、日本のほうがもっと住みやすいのですけど)。