イギリス生活に向けて

海外で働くためには

国際化という言葉を聞かない日がないぐらい、国際化はこのところのキーワードになっている。実際、国際化は目に見えて進んでいて、日本人が海外で働くことも、外国人が海外から日本に来て働くことも、そんなに珍しいことではなくなりつつある。

野球の野茂やイチロー、松井、サッカーの中田や中村の例を引くまでもなく、極端に言えば、大阪で働くか東京で働くのかを選ぶのと同様に、東京で働くかニューヨークで働くかを選ぶような状況だ。自分を雇ってくれるところがあれば、日本でも海外でも関係ないという感覚なのだろう。

裏返せば、あえて海外へ行かなくても日本で十分満足している人も多いだろう。わたし自身は、2006年8月からイギリスで働くことした。今後、同じような境遇に置かれた方にとって、なにかの参考になればと考えて、日記を書くことにした。自分自身のための備忘録という意味もある。

まず、どのような人の参考になるかを判断してもらうためにも、ここで、わたしがどのような経緯でイギリスへ行くことになったかを簡単に紹介しておく。特に、理系の人達に参考になるものだと思う。

わたしは技術者なのだが、昔からアメリカなどで働く技術者も多く、わたし自身の選択はそんなに珍しいことではないと思っている。理系は昔から国際競争のなかで生きてきたわけなので、日本のレベルは分野によっては、日本がトップレベルを維持している分野もあり、海外に行くことがとりわけ凄いことでもないこともある。では、わたしの場合はどうして海外かということを考えると、そこに自分にあった環境があるだろうと思えたからだ。技術系では、実際は専門が細かく分かれているため、自分の本当の専門分野にあった場所って、世界的に見てもそんなに多くないものなのだ。

以前、カナダの大学に1年滞在したことがあるので、英語圏であるとは言え、外国で生活すること苦労は体験済みなのだが、給料をいただいて異国で働くのと、海外赴任等でお客さんとして海外で働くのでは天と地の差がある。ここの点は気を付けなければならないと自戒しているところだ。

海外で働くと決めたときに、まずやるべきことは英語の履歴書(vita)と作成し、求人情報を探して、応募することだ。実際は、なかなかインタビューまでは進まないものだ。気長に準備するしかない。わたしの場合は、2年ぐらいかかった。運もあるが、日頃から国際会議や友人関係を通して海外の人を交流をもっておいて、紹介者になってもらえるとかなり有利になる。日本的なコネとか学閥という意味ではなく、その業界で有力/優秀な人から紹介をもらうことは、西欧の社会では実に大切だ。だいたいの場合、求人に応募する際に、何人かの推薦者からレター(referece)を提出することが求められる。推薦者は、国際的に名前のとおった人である必要がある。その他、職場の上司など自分の人となりを紹介してくれる人の意見もかなり重視される。ちなみに、アメリカの先生が書く推薦状は、日本のようにただ褒めまくるのではなく、自分が受けたその人の印象やその人の能力について的確に評価したものであって、良い面、悪い面が両方書かれると考えた方が良い。日頃から日本人を含めて10名ぐらいは世界的に名の通った人と顔見知りになっておくことが大切だ。

そのためには、外国語のクオリティは欠かせない。簡単な挨拶や生活会話ではなく、well-educated な外国語(普通は英語)力が必要だ。所詮、日本語を母語とするわたしたちにとって英語はsecond languageに過ぎない。英語ネイティブに近付く努力も大事だが、言葉に目を奪われすぎないで、自分の専門知識を常に高く保つことが第一条件だ。多少おかしな英語であったとしても、内容に興味をもってもらえれば、ちゃんと聞いてもらえるからだ。究極的には、そのひとの人間性まで問われる。結局は、人と人の関係なのだから。