コロナ5類時の診療

1年ちょっと前に、南アフリカの医師の報告を紹介し、オミクロン株がそれまでのコロナと比べるとかなり軽い症状しか引き起こさないということをこのブログで報告して、その時点で5類扱いを提案していた。それがやっと現実のものとなった。今、新型コロナが5類相当になった場合、診療する医者が増えるか減るかということについて諸説あるようです。実際は、医師法第19条のいわゆる応召義務があるため、診療は正当な理由がなければ拒否できない。つまり、5類になった場合、眼科に肺炎の治療を頼むような無理なシチュエーションではなく、常識的な診療対象である限り拒否できないのです。患者は行きつけのどの病院でも診察を受けらるようになります(インフル同様事前の連絡をして、待合室以外で診察を待たされることはあるでしょう)。

応召義務については、下記に非常に詳しく正確にまとめられいます。

コロナ診療での医師の応召義務-発熱患者の診療を一切拒否した場合、応召義務違反となるか? |ニッセイ基礎研究所

興味深い点は、19条には罰則はないけど、19条に違反した時点で7条の品位を損なう行為としてペナルティがあるという点。

厚労省の指針として、これまではコロナが2類相当であることを理由に、コロナ指定病院を案内することにより診療を回避することは応召義務には反しないということになっていました。逆に言えば、新型コロナが季節性インフルエンザと同じ5類になった場合は、新型コロナであることを理由に診療を拒否することはできないということになります。

そうはいっても実際には新型コロナは既に5類相当の扱いになっています。濃厚接触者の判定も保健所は感染者に任せていますし、感染者も自主的に療養するだけで誰もモニターしていません。感染者や濃厚接触者であっても実際には普通に社会生活している場合もあると思います。あえて、検査をせずに暮らしている場合もあるでしょう。それでも実際に感染した人が自宅療養で回復する病気だといことを体感していますので、新型コロナに対する警戒心は国民全体でかなり下がっているのではないでしょうか。極端なことを言えば、封じ込めができないほど感染力の強いウィルスで、かつ症状がインフル程度の病気ですので、長いスパンの間には国民全員が1回は感染してしまう病気であるというということです。特に、今でも9割近い医者が既にコロナを診療しているということですので、5類扱いになっても医療の提供状態は基本は現状と変わらず、一時的な感染の増加はあっても大きな社会的混乱はないでしょう。

誤解している人がいるようですが、既に大多数の人については、新型コロナの感染者の外出を制限したり、入院を強制する法的根拠はなくなっています。特に入院の強制は人権侵害の可能性が高いため、非常に限られた場合にのみ認められます。たとえばエボラ感染が日本で発生したような場合。初期の新型コロナ~デルタ株ぐらいまでの危険性の高いウィルスだった時期までは、入院の強制や外出制限をかける法的根拠がありましたが、感染症法の改正により新型コロナが新型インフルエンザ等感染症(1~5類の対象外)という分類になったあたりから、ほとんどの感染者は2類相当(1類準用)扱いの対象から厚労省の省令により外れています。だから今は自宅療養でOKですし、保健所の介入もないのです。これまでも感染者以外に対する外出・会食自粛はすべて依頼であって、法的な強制力はありません。それが良いことかどうかはわかりません。今後、もっと凶悪なウィルスが発生したときに、今回と同じようつもりで対応すると大変なことになる可能性があります。そういう意味では、平時の間に罰金や拘束も可能とする法的に根拠のあるロックダウンは実現可能にしておくべきでしょう。