応召義務についての補足

ネット上で特に医療関係者が、応召義務について患者さんが誤解しなように注意喚起している記事をみかけます。前回、応召義務について少し書いたので、捕捉しておきます。

 

先に紹介した下記の解説記事に書かれていることとの整合性を簡単にまとめる。

コロナ診療での医師の応召義務-発熱患者の診療を一切拒否した場合、応召義務違反となるか? |ニッセイ基礎研究所

 

(ネット上の主張)「応召義務は、医師が患者に対して直接民事上負担する責任ではない」

(解説)その通り

私見)医師免許は国から医療行為に対する独占的な権限を与えられているものですので、当然、その国に対して義務を負っていると理解しています。つまりは、患者が診察拒否を理由に、応召義務違反で病院や医師を訴えることはできないことになります。ただし、記事によると、これが損害賠償訴訟に援用される場合があるということですので、正当な理由なく診察されなかったことによる損害が、応召義務違反を根拠に民事裁判により認められる可能性はあります。

(ネット上の主張)「応召義務に罰則はない」

(解説)その通り。ただし、医師法7条の医師としての品位を損するような行為には罰則があり、応召義務にたびたび違反することはこの対象となる。

私見)国が応召義務違反を認めた場合は、合わせ技でペナルティが課せられることがあるということで、これまではそういうケースはないようですが、これまで使われていないからといって、無いとは限りません。

(ネット上の主張)「これまで応召義務に従って2類だから治療してきた病院は、5類になった後に新型コロナを診察しなくても応召義務には違反しない」

(解説)昨年8月の記事なので解説には5類のケースは書かれていない

私見)新型コロナが5類に規定されるのは、初めてのことですので判例はなく、裁判が起きてみないと結果はわかりません。国が新型コロナを5類に分類するということは、新型コロナを季節性インフルエンザと同様に治療せよという意思表示ですので、インフルエンザの患者を診察している病院はコロナも診察しないと、応召義務違反になると考えるのが普通のような気がします。厚労省もこれまで、「2類相当であることを理由に診察しなくても応召義務違反にならない」と説明していますので、裏を返せば、5類になれば応召義務が生じると解釈するのが自然ではないかと思います。

 

実際には、ほとんどの病院でコロナの診療をしているのが現状ですので、5類になっても医療体制にあまり変化はないのだろうと思います。外来エリアに陰圧室は不要ですし、ゾーン分けもインフルエンザ程度で十分です。コロナへの感染が心配な個人病院は、看護師さんも含めてN95(またはそれに準ずるマスク)をすればよいのではと思います。以前紹介したように、普通の不織布マスクではコロナは十分には防げないという論文が出ています。デルタ株までの大変な時期に発熱外来を担当された病院には大きな負担をかけてきましたので、オミクロンになって症状が軽くなり致死率も下がった現在、これまで発熱外来をやってこなかった病院こそ他の病院の倍ぐらいコロナの治療に携わって、地域医療に貢献してもらえるとよいのかなと思います。