イギリスの大学について。

べつにいろいろなイギリスの大学について知っているわけではないので、ごく限られた知識をつかって書いてみる。

まず誤解を恐れずにいうと、留学生を除いた普通のイギリスの大学生のマインドはかなり日本の大学の学生のマインドに近い。これは、アメリカの学部生が、卒業できる約半数に残ろうと、死ぬ気で勉強しているという状況と比べると、という注釈がつく。

日本の大学生が勉強していないかというと、そんなことはないので、それと同じようなマインドと言ってもいい。私自身も日本の理系学部で、大学3年生まではかなり厳しいスケジュールで授業をこなしていた記憶がある。みな、週に1回は深夜まで実験レポートを書いていた。理系の人にはわかると思うけど、べつにさぼっていて締切まえにあわてていたのではなく、週に1回実験があって、そのレポートの締切が数日後に指定されていて、その締切前までには語学などほかの授業の宿題があったりするので、結局直前に徹夜ということになる。

そうはいっても、イギリスの大学生にはかなり日本の学生と共通のマインドを感じる。それは「授業はさぼって単位だけをなんとかとりたい」というマインド。だから、アサインメントやコースワークの直前になると、それまで半分ぐらいしか来ていない学生が、ほぼ全員現れたり、講義の資料だけ手に入れるとさっさと帰ってしまったりする。「きみたちは、学問がしたいのではないのか〜」と聞きたくなるけど、やっぱり学生さんは単位を取りたいだけとということはあるのだろう。

もちろん、ドクターコースの学生さんになると、かなりモチベーションが高く優秀だ。

聞いた話では、ケンブリッジ大には、メンターという上級生が下級生を指導するという伝統がある。ほかの大学もあるようだけれど、ケンブリッジでは徹底していて、下級生ひとり一人に上級生が割り当てられ、週に一度程度のミーティングをしながら完璧にサポートするという伝統のようだ(spoon feedingだという声もあるけど)。

日本と特に違うと思うのは、大学がまるで日本の企業のように様々な教官向けの研修制度を持っていること。大学の講師陣に対して一連の研修コースを用意し、アカデミクスのメンバはどうあるべきかを教え込んでいる。新任講師は、半年ぐらいにわたって、10以上の項目について研修を受ける。私も2日のオリエンテーションで、どういう授業が良い授業か、講義形式・グループ討論形式をどう使い分けるか、障害者にどう対応するか、学生のクレームにどう対応するか、を聞かせてもらった。しかもこの研修がそのまま魅力的な講義はどうあるべきかを百戦錬磨の教授たちが身をもって示す機会になっている。こういうところは、日本の大学から完全に欠落しているところなので参考にすべきだろう。