日本の衰退は経済力だけではなくて、学力にも現れているようだ。

言葉を悪く言うと、お金持ちでお勉強のできたニッポンは、いま徐々に貧乏になりつつあって、さらに頭も悪くなりつつある、といったところだろうか。

OECDが発表した2006年の学力調査PISAの結果では、日本の15歳の学力が国際比較の中で大幅にランクダウンしている。

http://www.chunichi.co.jp/article/world/news/CK2007120502069737.html

特に数学的応用力が6位から10位に、科学的応用力が2位から6位に転落した点が深刻だ。

源流をたどれば日本の現在の富や国際的地位は科学技術の優越によりもたらされているのに、それを担う次世代の人材のレベルが下がっていることは将来に大きな禍根を残すだろう。最悪のシナリオを考えると、20年後の日本は近隣諸国の後塵を拝して2流国に転落している恐れさえある。自動車やゲーム機、AV機器、パソコン、携帯、衣料品、薬品、すべて海外製品に価格と性能で劣ってしまったら資源のない日本はどうやってご飯を食べていくのだろうか。これでは、最近のプロ野球選手やサッカー選手と同じように、優秀な科学者や技術者は待遇が良くてレベルの高い海外の研究機関にほとんど流出してしまうという悪循環に陥るだろう。

そうならないためにも今から基幹分野には優秀な研究者や大学の先生が日本に集まる環境を整備しておかないといけない。研究の自由度と十分な研究費・給与面での保証があれば、自然と優秀な人が日本に集まってくる。以前に紹介した、世界の大学ランキングのトップ10に日本の大学が2〜3校入るようにするためにどうすればいいか考えないといけない。

そのヒントとなる逸話を2つ。アメリカの一流大学のとある研究室で次の大統領は誰がいいかについて、先生や学生が真剣に議論していた。だが、ふと気がつくとその研究室のメンバは先生から学生まで誰もアメリカ国籍をもっていなかったので実はひとりも投票権を持っていなかった。もうひとつは、アメリカの別の一流大学の研究室で論文の英語のチェックをしようと思って英語のネイティブスピーカーを探してみたら、20名以上いる研究室にネイティブがひとりもいなかった。世界のトップレベルを維持するということはこういうことなのだろう。野球も科学技術もトップレベルのチームを作るためにやるべきことは同じだ。日本では、優秀な大学の先生方が入試問題作成や地元高校への学生の勧誘などの雑用のために忙殺されているが、これでは行く末はかなり暗い。