ヨーロッパに居ると日本人は働きものなんだなあと改めて思う。

たとえば、イタリア人は8月の一ヶ月間は休むものと決めている(あまりに暑いということもあるけど)。最近、イタリア人を敬意を持ってみているのだけれど、一人当たりのGNIは日本もイタリアもほぼ同じであるにもかかわらず、イタリアは非常に豊かでのんびりした生活をしている。

ここイギリスでも多くの人は「週末に働くなんて信じられない」という姿勢だ。「生きるために働いているのであって、働くために生きているのではない」という考えが大多数。

最近、日本の掲示板で「同僚が妊娠して休暇に入り仕事が増えてつらい」といった相談を見かけたが、たぶん、多くのイギリス人にはこの悩みは理解できない。

なぜ、同僚が産休に入ると仕事が増えるのか? 自分の仕事を以前と同じようにやればいいじゃないか、というのが常識。つまり、他の仕事が終わろうが、終わらなかろうが、以前から自分のしていた仕事をして、定時が来たら家に帰る(または飲みに行く)。もし、人が抜けたのなら、その人の代わりを雇うのが会社の役目。もし、定時以降も深夜まで働かないとこなせない量の仕事があるのなら、その時間に働く人を雇うべき、という考えかただ。万一、会社が無理に従業員を時間外に働かせようとすれば、ユニオンの怒りを買う。イギリスのユニオンは強力なので、ユニオンから問題提起のレターが出た時点で経営者は無理はしないだろう(たぶん)。下手をすると、ストライキ等の報復にあって会社が立ち行かなくなることを恐れるからだ。

仕事が終わらない状態でみんなが帰るとどうなるか。当然、その仕事の結果を待っている人が困る。だからイギリスはなんとなくいろんなことが効率的に進まない。日本からイギリスに来ると最初は面食らうが、実はそれでいいのかもしれない。個々が幸せじゃない状態で、社会が効率的であっても結局だれも幸せではない。

もうすこし日本人も自分の価値と生活の質を考えて、組織の奴隷として働いて喜んでいるという時代は終わりにしてもらいたいものだ。最近、アメリカでも構成作家の組合がストをして、TV番組や舞台が中止になるということがあった。ストは単なる表面的な現象に過ぎないが、日本だけが、いまだにこういう面では先進国になりきれていないように思う。