円安継続

円安傾向が続いていて、それを止めるため先週の金曜日 7/12には為替介入があったのではと言われています。公式発表がないが、当座預金増減要因の予想値と市場推計値の差額である3.5兆円ぐらいを投入したもよう。

前にも書いたように為替介入は原則すべきではない。確かに1日に1ドル10円ぐらいの変動があれば、サーキットブレーカーのように一時的に動きを止めるというのはアリかももしれませんが、基本は市場原理に任せるべき。下手をすると、介入した側が急激な市場の混乱を起こしている加害者側になってしまう危険もある。

カリフォルニアの原生林では、時々自然に火災が起きて森が燃えてしまう。以前、現地の林野担当者は自然火災を必死に消していたが、ある時、火災が新しい植物の育成、森の再生の役にたっていることに気づいて、自然火災を放置するようになったという。近年は、火災が規模が大きくなりすぎて住民を被害を与えているが、本来、地球温暖化の前は自然の摂理の一部であった。

神の見えざる手が円安にドル円を動かしている限り、それには意味があり、故意に操作しても良いことではない。今やっているのは、インフルエンザで熱が上がっている子供に治療をせず、解熱剤を飲ませて見かけ熱を下げて悦に入っているだけ。今の円安は日本経済にインフレを促している。日本と海外の間に生じた物価の断層を解消するよう自然の力が働いている。とても酷な話になるが、かなりの混乱を覚悟してあえて国内のインフレを起こすことで、海外との格差を解消するしかない。現在、実質の最低賃金ベースで倍ぐらいの差があるので、たぶん年15%ぐらいのインフレが何年か必要だろう。不思議な話だが、日本がインフレになるとドル円円高に向かうだろう。経済原理的には、円高になって購買力平価を均衡させるはず。つまり、今なら1ドル70円ぐらいまで自然に円高になるべき。ところがそうならないのは、インフレの差が原因で価格差が生まれていることにある。

1年半ぐらい前に世界的な(ハイパー)インフレがあり、デフレだった日本だけがほぼ無傷だったことに日本人は気づいていない。たとえば、イタリアでの状況を現地の方が報告してくれている。こういう生情報は本当にありがたい。イタリアの光熱費が60%増になったとか、食料品が17%ぐらい上がり、ものによっては倍近くになっている。アメリカでも以前月50ドルぐらいだった携帯のインターネットプランが100ドルぐらいになっている。

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前から書いているように、物価の差を調整するように円高に為替が動くのではなく、円安になってインフレで物価の差が埋まるように動いている。これが神の差配であり、これに逆らっても良いことはないばかりか現状を長引かせるだけで逆効果である。詰まるところ、日本がインフレになって海外との物価差が埋まるまで円安は継続し、物価の差が縮んでくると円高方向に向かうだろう。解熱剤で発熱を抑えて、病気を抑えた気になっているととりかえしのつかない重病になってしまう。

今日本がやるべきことは、ガソリン代や光熱費への補助をなくして、素直に物価高を受け入れることと、金利を3%ぐらいまで段階的に上げること、そして国内で販売する製品については国内で何十%かの部品を生産するよう義務付けること。これをしない限り、いくら為替介入を繰り返しても円安傾向は継続し、1ドル170円、下手すると200円、240円と円安になる。これは正常なドル円レートではない。この歪みは日本人の生活を将来困難にするだろう。まず、海外から日本に働きに来る人がいなくなる。逆に、優秀な日本人は海外に流出する。そして一番大きいのは、日本人の貯金が海外に流出する。資本逃避だ。日本国民はトータルで1000兆円の貯蓄を持っていると言われているが、このお金が全部海外の株式に投資されてしまうと、日本の国債を買う資金がなくなり日本国債はデフォルトする。NISA効果で個人資産から月1兆円ぐらい海外投資されているようだが、これがもし月10兆円になると1年で120兆円が流出し、さらに加速していると3年ぐらいで日本国内の預貯金が半分ぐらいになる。個人はこれでハッピーで、なぜなら海外投資した対象のリターンは年4%ぐらいは確保できる。また、この流れでは円安になるので、為替差益を含む見かけのリターンはさらにプラスになる。実際これが現在起こり始めている。ただ、その行きつく先は日本国債のデフォルトだ。

まとめると次のことをすぐにすべき。①今すぐ金利を上げること。日銀が債務超過になることを厭わず金利を上げる。②物価抑制策をやめて物価を上げる。③アメリカのように国内で販売する製品の国内生産率に下限を設け、海外生産分には輸入関税をかけることで、国内生産のための設備投資を強制するような法的措置をとること。④これらにともない最低賃金を1500円に上げて、国全体の給与を上げること。

書いていて怖くなってきた。このまま安全運転、事なかれ主義、他力本願のまま現状放置を続けていると日本経済が大変なことになりかねません。今コリジョンコースに乗っていて、効果的な手を打たないと数年先に破滅的なことが起きかねないことを認識すべき。トルコのように気が付いたときには経済・財政がアンコトローラブルになりかねない。今、国民にこの危機を訴えかけて、痛みをともなう変革のために国民が一致団結することを呼びかける強いリーダーシップが必要とされている。こういう問題点を先読みして政府を追及すべきマスコミも全く危機感を持っていない。単に円安大変ですねとか、為替介入やりましたね、といったニュースを危機感なく流している。Wake Up!