感染症法を理解する

今さら感はありますが、新型コロナ対策に対してどのような法的な仕組みで我々が守られているのかを理解できていなかったので、出来る範囲で調べた結果を共有します。お断りとしては、当方は法律の専門家でも医療の専門家でもありませんので正確性は保証されません。疑問点は各自で情報源にあたってください。

 

現在の新型コロナに対する対応は、感染症*1上の感染症1類に新型コロナウイルスを適用して、法的な拘束力をもった感染対策をするものです。今まで2類相当だと思っていましたが、感染症法の条文的には新型コロナウイルスを1類に準用すると規定する形になっています。確かに2類も1類に準用されているので2類相当ではないわけではないですが、新型コロナウイルスは2類からは明確に除外されていますので、規定的には1類相当です。

 

感染症法では、危険な感染症を1~5類に分類しています。これにプラスして新型インフルエンザという分類があります。ややこしいのは、新型コロナ出現前から、感染症法ではSARSやMERSを対象にしていて、これらもコロナウイルスなので感染症法にコロナが出てきますが、これらはSARSやMERSを対象にしていてCOVID-19ではありません。ただ、新型インフルエンザ感染症等の定義に新型コロナウイルス感染症の定義(第6条7項)に新型コロナウイルスが入っているので感染症法の対象にはなっています。

 

分類 感染症
1類 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
2類 急性灰白髄炎結核ジフテリア重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)、中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る)、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型が新型インフルエンザ等感染症(第七項第三号に掲げる新型コロナウイルス感染症及び同項第四号に掲げる再興型コロナウイルス感染症除く。第六項第一号及び第二十三項第一号において同じ。)の病原体に変異するおそれが高いものの血清亜型として政令で定めるものであるものに限る。第五項第七号において「特定鳥インフルエンザ」という。)
3類 コレラ、細菌性赤痢腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
4類 E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病炭疽鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病であって、動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの
5類 インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く。)であって、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの
新型インフルエンザ等 新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ、新型コロナウイルス、再興型コロナウイルス

 

医師は、「一類感染症の患者、二類感染症、三類感染症又は四類感染症の患者又は無症状病原体保有者、厚生労働省令で定める五類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者及び新感染症にかかっていると疑われる者」の情報を保健所に届けなければいけません。

 

その他、各分類毎の対応を表にまとめる。

分類 届け出 入院措置 施設消毒
1類
2類 △(結核のみ特例)
3類  
4類  
5類 △(省令で定めたもの)    
新型インフル  

 

6章によって入院措置をした場合の医療費はすべて都道府県の負担となる。なお、22条の2によって、入院措置は病状の程度に合わせて最小限であることが規定されている。26条で準用することで、新型インフル等は1類と同様に扱われます。ただし、対象者は厚生省令*2(少し古いかも)で定めていますので、省令により簡単に新型コロナを新型インフル等の分類に戻せるようになっています。現状でもかなり対象者を絞っていますので、現実問題、基礎疾患の無い若者は「1類相当ではない(もちろん2類相当でもない)」ということになっています。もちろん、対象でない軽度なコロナ患者は、第一種感染症指定医療機関や第二種感染症指定医療機関でなければコロナを診療できないということはないので、どの病院でも診察できますし、陰圧やゾーニングも不要です(個々の病院の感染防止のためにやるのは妨げられません。まは、他の法律や政令でなにか規定されているのかもしれませんが、そこまで追いかけられませんでした)。

 

少し長くなりましたが、もしオミクロン株に対する対応を改めるとすると、現在の1類相当から5類相当にするのではなく、本来の新型インフルエンザ等の分類に戻すことになります。今後の省令改正時に、入院した人のみ準用の対象にしておけば、高額な入院費などはすべて公費負担になります。また、入院以外の病院での診察・治療費は別の枠組みで現状は無料になっていますので、それを継続すればいいだけです。新型インフルエンザ等の枠の場合、感染者は自主隔離の協力がもとめられますが1類のような強制力はありません。

 

たぶん現状の問題は、地方自治体が1類相当の対象者を入院させる法律になっているので、保健所が入院を取り仕切らないといけないため、業務がひっ迫しているのですが、よく考えるとボトルネックを解消して保健所が楽になるためには、軽症者は準用対象でないので普通の病院で診察できますので、普通の病院で診察して、もし悪化したら中核の病院に普通の病院から入院させればいいのです。入院させてはいけないという制限はありません。あとから、入院した人を保健所が追認すれば、地域の病院から中核病院への入院もスムーズに進み、保健所ボトルネックも解消されます。