感染拡大についての知識のアップデート

感染症について知識があるひとの中では常識なのでしょうが、素人として最近知ったこと。

実行再生産数=基本再生産数×行動変容による係数×ワクチン等による係数


すみません、正確な医学的な名称ではないですが、式が分かりにくくなるので表現を一般向けにしてあります。

実行再生産数は、この値が1より小さいと感染が収束し、1より大きいと感染拡大する。つまり、感染症を収束させるには、マクロには実行再生産数を1より小さくすれば良いということになる。

基本再生産数は、ウィルス毎の定数で新型コロナの場合1.5~3.0ぐらい。ひとりの感染者が平均何人に感染させるかを示す数値。

行動変容による係数は、マスクをする、三密を避ける、外出しない、などの非医療的な方法により、何もしない社会状態と比較してウィルスの拡散を低下させる率[0,1]。

ワクチン等による係数は、ワクチンを接種することで感染が抑えられる率[0,1]。

たとえば、基本再生産数3.0のウィルスに対して、行動変容により0.6の削減をして、ワクチンにより0.5の削減ができれば、3×0.6×0.5=0.9となり、収束する。これまでは、ワクチンが無かったので、マスクや三密回避による国民の行動変容で、0.3ぐらいの削減効果があったことになる。

一方、一昨年までのような社会に戻して、ワクチンだけで基本再生産数を1より小さくするためには、ワクチンにより0.3の削減が必要になる。ワクチンの削減係数が0.1として、2回接種割合が全国民の3/4ぐらいになれば、ワクチン等による係数が1-(1-0.1)×3/4=0.325になって収束する。

では、いまなぜワクチン接種が進んでいるのにもかかわらず、感染が拡大しているかというと、ひとつには行動変容による係数が以前よりも悪化(大きくなっている)ため。特に若年層が感染のリスクが高い行動をするようになっている。もうひとつは、従来の新型コロナの基本再生産数が3程度であったのに対し、変異ウィルスの基本再生産数が最大8.0ぐらいまであると言われているため。8は盛りすぎという声もあるが、実は基本再生産数は、ウィルスにより決まる値ではあるが地域によって変わる。たぶん、東京の一部の密集社会では8ぐらいあるのだろう。

さて、基本再生産数が8だとすると、従来の行動変容の係数が0.3程度だと推測すると、それだけでは実行再生産数は2.4にしか低下しない。つまり従来のお願いベースの行動変容が実現できても感染は急拡大する。行動変容だけで収束させるには行動変容による効果を0.1にする必要があるので、これはロックダウンレベル(生活必需品以外の全店舗の休業、外出禁止)を1週間ぐらい続けないと収束しない。実際はワクチンの効果で0.4ぐらいの感染阻止ができれば、以前と同じレベルの行動変容で収束させられる。ワクチンの2回接種が全人口の75%ぐらいまで広がるまでは、残念ながら東京および近隣エリアでは感染が拡大する。昨年と同じレベルで個々が感染対策を当面は続ける必要がありそうだ。

以上が、感染を純粋に収束(終息ではない)させるための計算になるが、政治判断で感染拡大をある程度許容することもアリではないかと思う。イギリスなどは、感染拡大による集団免疫の獲得を目指しているので、あえて感染拡大を放置している節がある。日本でも現在のところ感染拡大の割には、コロナによる死者数はほぼ増加していない。ワクチン接種により医療関係者や高齢者の感染が激減していることから考えると、ある程度の感染拡大は覚悟して、インフルエンザと同程度の扱いにして、すべての病院でコロナ患者を受け入れるようにする時期かもしれない。昔から、「風邪に効く薬はない、自宅で寝て直せ」といわれていたが、実は従来型(新型登場前)のコロナウィルス7種類のうち4種類が風邪とよばれていたので、ワクチンの普及とともに風邪扱いでも良いように思う。確かに急に血中酸素濃度が低下する危険があるので、ただの風邪ではないので、急変場合の救急搬送の準備は必要である。現状では、感染が嫌なら当面の個々人の対策としては、ワクチンを打つか、最大限の感染予防対策(満員電車を含くむ密をさけ、常に不織布マスクをし、手洗いする、外食・会食しない)をするかのどちらかを選ぶしかないようだ。変異株については、行動変容だけでは感染は収束しないので、その地域の3/4がワクチン接種するまでは感染拡大が続く。今の日本の法体系では、ロックダウンができないので誰が首相や厚労大臣、都知事をやってもこの状態は避けられない。台風や地震と同様の自然災害と考えるしかない。